番外編
□俺とぼくの永遠の物語
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俺は出会ったんだ。
道の端っこにうずくまった灰色に、縦の黒い筋が入ったフワフワの毛玉に。
俺はそいつを拾い上げた。ハムスターの様だが黒い羽が生えている。
この頃は遺伝子組みかえが進んでいるからきっとこいつはハムスターとコウモリをかけあわせた奴に違いない。
よく見ると羽が折れているようだ。それに体中が傷だらけだ。
得体の知れない動物とはいえ、このまま放ってやるのも可哀相だ。
俺は、この謎の動物を家に持ち帰ることにした。
俺の家には両親と2人の兄貴がいる。だが、今はみんな働きに行っている。
俺はタオルを1枚持ってきて謎の動物をくるんだ。
かすかにタオルが呼吸で上下している。生きている証拠だ。
とりあえず見た目はハムスターなので台所にあるチーズを与えてみることにした。
謎の動物の口元に持っていってやるとチビチビと食べ始めた。
両親や兄貴の目を盗んで看病しているうちに、そいつはみるみるうちに元気になっていった。
ある日、何か言いたげな目でこちらを見上げたので何となく「元気になってよかったな、お前。」と話し掛けた。
すると驚くことに謎の動物は小さな口を人間のように器用に動かしてこう言ったのだ。
「ぼくの名前はトロでしゅ。本当に助けてくれてありがとでしゅ。」
まぁ始めから奇妙な動物だとは思ってたが、これには俺もびっくりした。
最初はぎごちなかったが、次第に打ち解け、身の上を語ってくれた。
「ぼく、久々に家から出て空を飛んでいるところで不覚にもカラスに襲われたでしゅ。」
なんて鈍臭いんだろう。
「お前・・・トロはハムスターとコウモリの掛け合わせか?」
トロは一息置いてからこう答えた。
「まぁ・・・。そういうモノだと思ってくれればいいでしゅ。」
「そうか。・・・もう羽も完治したからもう何処に行ってもいいぞ。」
俺はがそう言うと、トロは、
「とんでもないでしゅ。ぼくはスゥしゃんに恩返しがしたいでしゅ。何かぼくにやってほしいことはありましゅか?」
突然そんなことを言われても困る。
俺の願いは、叶うはずのない、作り話が現実であって欲しいという無理な願いだ。
「何もないさ。俺は明日旅に出ようと思ってる。竜を探しに行くからな。」
「竜ってあの冒険者の大地の伝説のでしゅか?・・・探しに行ってどうするつもりでしゅか?生け捕りにでもするつもりでしゅか?・・・・・・それは同じ自然界で生きる動物同士のしてはならないことでしゅよ!」
トロが少し厳しい口調で言った。
「そんなことはしないさ。ただ伝説を確かめに行くだけで。本当は見送られて堂々と旅に出てぇんだけど、親も兄貴も大反対。「そんな伝説ありっこない」ってさ。」
「そうでしゅか・・・」
「トロはトロの好きなようにしていいぞ。俺はもう明日に備えて寝るからな」
俺はトロを物陰に隠してその部屋から出ていった。
旅立ちの日がやってきた。
まだ太陽が出ていないからか、窓はきちんと閉めているのに心なしか肌寒いし息が白い。
重い体を持ち上げ、軽い朝食を摂る。
トロは、部屋の何処にもいなかった。
きっと出ていったのだろう。
コートを羽織って忍び足で親と兄貴達の部屋を横切り、外に出た。
凍てつくような寒さだった。おもわずコートのポケットに手を突っ込む。
ぐにゅ
手に感じる、触ったことのある感触。
「ぼくなりにスゥしゃんへの恩返しをするでしゅ。・・・旅は道連れって言うでしゅ。一緒について行くでしゅ。有り難く思うでしゅ。」
「ちょっとでも足手纏いにったら置いていくからな。」
こうして俺に仲間ができた。
そして2人は歩き続けた
やり残したことは無い。