DRAGONandJEWELRY
□第一章
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静まり返った家。その子が出て行くのを寂しく見送るしか出来ないそれも、その子にとっては心残りになるだろう。
荷造りをしたそれを肩にかけると、ドアをゆっくりと閉めた。
「いってきます」
ぎぃ、と扉の軋む音、その後にバタンと小さく鳴った。
「本当に行く気かい?」
目の前の女性が心配そうに顔を覗き込んできた。
長い前髪が、少し役に立ったかもしれない。背の低い自分の顔を見るには、女性は相当屈み込まなければいけなかった。
「大丈夫。兄と家の事、宜しくお願いします」
笑顔で答えると、おばさんは困ったように眉を寄せる。
視線を空に向け、少しするとしっかりと前に視線を向けた。
「ちゃんと帰ってきなさいよ」
了解の意味を込めて強く頷く。そのまま白銀の色は夜明け前の闇に溶けていった……。
目指すは竜の住まう谷へ
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