その後の3Zのその後

□結婚式の二次会は別名を婚カツパーチィと呼ぶ
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二ヶ月後。辰馬とおりょうの結婚式は意外にも滞りなく終わり、二次会に突入。しかし、新八はやっぱり幹事なんてやるもんじゃないと、つくづく思っていた。
―つうかなんだ?このカオス状態…このボケ面子で飲み会って…いや、薄々気づいてたけどね…。ツッコミきれるかアアアア!ー

まだ昼間だと言うのにほとんどの参加者が完全に出来上がっているのだ。
「坂本ォ。なぁんで神前式にしたんだァ?おじさんはァ、テ〜メェらの〜誓いのちゅー見てからかってやろ〜と思ってたのによォ」
松平が辰馬のコップにビールをなみなみと注ぎながら尋ねた。辰馬はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに頷く。
「わしも誓いのちゅーがやりたかったけんど。我が坂本家のしきたりらしくてのォ。泣く泣く神前式にしたぜよ」
「そういやァあんたの実家大地主か何かだったねェ」
松平の隣に座るお登勢が相づちを打つ。
「あぁん?それじゃあテメェら、あれだァ。今やれ今ァ!」
松平の提案に会場が沸く。
「おりょうちゃん。みんなもこう言いゆーことじゃし、見せつけちゃるがかァ?」
「勘弁してよ…」
辰馬はやる気満々だが、おりょうは眉をひそめた。
「もう、充分見せつけられちゅー!だいたいお前(おまん)の生ちゅーなんぞ見たくないぜよ。キモイ」
ノリノリの辰馬に教師グループの端に陣どっている陸奥があっさりと言い放った。辰馬は「ヒドいぜよォ」なんて言いながらあまり気にしていないようだったが、場の空気は微妙に悪くなる。
「じゃあ、坂田先生たちに代わりにやってもらおうぜ」
それを払拭しようとしたのか全蔵が銀八と月詠に無茶ぶりをしてきた。
「俺たち関係ねーだろオオオオ」
銀八が立ち上がり抗議するも、全蔵は悪びれない。
「いいじゃねーか。照れる必要ねーだろ?ちゅーなんてお手の物だろ?」
「冗談やめろやアアアア!つうか逆に夫婦生活長くなると回数減るんだよ!んな甘ァい空気にならなくなんだよ!」
「じゃあ久しぶりに新婚気分に戻って」
「…日輪まで悪のりするのはやめなんし」
何故かサラリと日輪まで全蔵の無茶ぶりに乗っかる。そしてこの展開であの人物が割り込まないはずがなかった。
「それじゃあ先生。私とちゅ…」
「「なんでお前じゃあアアアア」」
息ぴったりに銀八と月詠が、さっちゃんこと猿飛あやめに踵落としツッコミを炸裂させた。
すると今度はゴリラもとい近藤勲が負けじと立ち上がる。
「仕方ないな!お妙さん。俺たちの熱い接吻を見せてあげましょう!」
「近藤さんったらなんの冗談ですか?」
場を盛りさげないようにという配慮だろうか、志村妙は冷静に返した。
「ヤダなァ。お妙さんったら照れちゃって」
「あなたとキスするくらいなら、ゴキブリにキスする方がマシです」
「ゴキブリ以下アアアア!?」
爽やかな笑顔で妙が近藤を絶望の淵に追いやったところで、一番端になんとか座る長谷川泰三が口を開く。
「新婚なんだし、土方くんとミツバちゃんにしてもらえばいんじゃね?」
その提案に言葉を失い赤くなる土方十四郎と新妻のミツバ。しかしコレにも異議を唱える者がいた。ミツバの実弟の沖田総悟である。提案者の長谷川を殺気に満ちた目で睨みつけた。
「おい…面白くねェ冗談言ってんじゃねーぞ、死にてェのか?このマダオが」
「そーちゃん。お友達にそんなこと言っちゃダメよ」
「ごめんなさい!姉上」
ミツバが優しく諭すと、沖田はジャンピング土下座で謝る。長谷川は神様仏様ミツバ様のおかげで、なんとか難を逃れたのだった。
「つうか、総悟テメーも連れがいるだろうが。テメーがやれ」
元々やるつもりはなかったが沖田に邪魔されたのが少々癪だった様子の土方が言った。
「アンタに命令されてやるのは嫌でさァ」
土下座の体勢のまま沖田が顔を上げサラリと言うと、その隣に座る神楽が呆れぎみの視線をよこす。
「私、たった今コイツと別れることを決めたアル」
「つーことらしいんで、無理でさァ。すいませんねィ。土方さん」
「おいいいい!別れ話切り出されてるのになんで、んな普通ウウ?」
と、どんどんとグダグダになってきたなと新八が思っているととんでもない一言が聞こえた。
「こうなったら仕方ねー。場を落ち着かせるためにも幹事の新八!お前誰かとちゅーしろ」
「なんでそうなるんですかアアアア!!!」
提案者はもちろん銀八。新八は目をむいて抗議した。
「カップルみんな嫌だって言ってるしさァ」
「だったらもういいでしょう?絶対誰かがキスしなきゃいけない訳じゃないですし」
「いや、そういう空気じゃん?」
「そう思うならあんたがやって下さい」
「いやいや、これはアレよ。独りモンのお前にいい思い出を作ってやろうという―」
「そんな憐れみは御免被ります」
新八は幹事を引き受けた時の二の舞は御免だと言わんばかりに拒否する。
「それでは、私がやりましょう」
混沌となる会場で一際落ち着いた声で言い立ち上がったのはたまだった。
「た、たまさん?」
「私は女優ですから、キスシーンだと思えば平気です。それに私には恥ずかしいという感情がありませんし」
「いや…。そんな気持ちでやってるのかと思ったら、こっちが虚しいですよ!」
新八はこっそり山崎を気にしつつ、断る。山崎はたまの発言に複雑な表情を見せていた。
「たま。アナタハ大女優ナンダカラ、ソンナコト軽々シク、口ニシタライケナイヨ。一万円デ手ヲ打ッテヤル。早ク出シナ、童貞」
「おいいい。バカにしてんのオオオオ?そうまでしてキスしたいとか思ってねーよオオオオ」
キャサリンのアクドいボケに新八がツッコミを入れたところで、今度は妙の隣に座っている柳生九兵衛が挙手した。
「新八くん。そのくらいの金なら僕が立て替えておくが…」
「だからお金の問題じゃありませんんん」
予想通りの九兵衛のボケに新八はすかさずツッコミを入れる。そこに招かねざる客が立ち上がった。
「おい、メガネ苦しゅうない。余が一肌脱いでやるぞ」
ハタ校長であった。その瞬間、場が静まり返り全員見事に目を逸らした。
「…悪い冗談やめて下さいよ。係長」
銀八がため息混じりに言う。
「係長じゃなくて校長ね!何この空気?余一人がスベったみたいなさァ」
「いや。アンタはここに入ってきちゃいけないよ、総長」
今度は全蔵が言う。
「だから校長!」
「あんれ〜?委員長二次会に来とったがかァ?わしは今の今まで気づいとらんかったぜよ。アッハッハ」
辰馬がとどめの一撃を放つ。
「ぬしら『長』がついてればなんでも良いと思ってるんじゃろう?……つうか、泣いていい?」
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