小説(十二国記二次)
□第五章 評判
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どうしたの、お嬢さん。道にでも迷った?
大丈夫?ならよかった。
え?どうして女だと分かったかって?
こう見えても100年ぐらい生きてるからね、それなりの観察力は持ってるつもりよ。
そう、和州城で働いてるのよ。あなたはこのあたりの子?
違う?よく迷わなかったわね。明郭は慣れてない人には迷いやすいでしょう。
なるほど、時々来るのね。知り合いでもいるの?
これから会いに行くところなの?じゃあ、もう行かないといけないんじゃない?
まだ大丈夫?そう。
え?そうよ。よく知ってるわね、新しい和州侯がいらっしゃった話なんて。
ねえ、立ち話もなんだから、そこの茶屋に入らない?お金なら出すわよ。
自分で出す?いいのよ、こういうときは年長者に出させなさい。
なんの話だったかしら?
そうそう、今の州侯のことだったわね。みんなの第一印象は"真面目そう"だったそうよ。
私?私は昔のあの方を少し知ってるから。
あと、何人かは心配してたわね。見た目が若くて頼りなく見えたんでしょう。
でも、私はすぐに大丈夫だと思ったわよ。
令尹や左将軍がすぐになついたもの。
あら、こんな言い方は失礼かしら。でも、まさにそんな感じだったの。
お二人のことも、よく知っているけどね、あんなに早く心を開くのは珍しいの。例外は今の右将軍と前の州候だけだった。
…昔、酷い目にあったから、どこか警戒している部分があるのよ。
…ごめんなさい。ちょっとぼんやりしてしまったわ。
え?なつくってどんな感じかって?
面白いわよ。どんなに怒鳴られようと無視されようと適当にあしらわれようとめげずにちょっかい出すんだもの。
令尹なんて、この前、両頬を摘まんで引っ張られてたわよ。
将軍は丸めた反古をぶつけられてたし。
…よく考えると州侯も面白い人ね。
ああ、もう行かないと。
いえいえ、私も楽しかったわ。ありがとう。
いいのいいの、さっきも言ったけど、こういうときは年長者に払わせなさい。
じゃあね。
またどこかで会えるといいわね。