小説(十二国記二次)

□第十二章 居眠り
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それは、とりわけ暑い日の午後のことであった。

ただでさえ暑さは体力を奪う。その上、前日からその日の午前にかけて厄介な案件を処理したため、晴穹と桃莉は疲れていた。

そして、午後になって爽やかな風が吹き始め、暑さが少し和らいだ。

――つまり、眠くなる条件が整ってしまったのである。





一番最初にそのことに気が付いたのは、剋磊であった。

書類を提出しに来た彼は、執務室に入室した途端に唖然とした。

目の前には晴穹と桃莉がいる。そこまではいい。

問題は、2人が揃って突っ伏し、寝息をたてていることである。

「これはまた珍しい」

我に返った剋磊は面白そうにそう呟いた。が、すぐにそうも言っていられないことに気がついた。

何かを書いている途中で夢の中に旅立ってしまったらしい晴穹の手には、筆がある。

筆には当然のことながら墨が含まれており、その墨が書きかけの書類に大きな染みを作っていた。

「あー…」

さてどうしようか、と頭を掻いていると、軽い足音とともに寧瑛が顔を出した。その後ろから、明藍も顔を出す。

「ねてる」

「まあ」

「疲れが出たようですね」

そう言いながら、剋磊は晴穹の手から筆を抜き取った。

と、

「おー。寝てる寝てる。珍しいなー」

今度は雪條がやって来た。

「どうする?起こすか?」

「居眠りするほど疲れていたなら、もう少しそっとしておきましょうか」

雪條の質問に、剋磊が答える。

「私もそのほうがいいと思います」

「おこしたらかわいそう」

明藍と寧瑛も同意した。

「俺が居眠りしてたらすぐに起こすじゃん」

「あなたは大したことをしてなくても居眠りするからですよ」

「えー」





しばらくして、桃莉がもぞりと動いた。

「…んー?」

寝惚けた顔で体を起こし――、はっとした顔になる。

「寝てた!?」

「おはようございます、桃莉様」

「よく寝てたなー」

剋磊と雪條が答えた。明藍と寧瑛は先に帰したが、2人は残っていたのである。

「書類、書きかけのがあったのにー…。あれ?晴穹も寝てる」

桃莉は立ち上がって、もう1人の肩を叩く。

「晴穹ー、起きてー」

「う…」

晴穹ももぞりと動き、その拍子に紙が一枚ひらりと落ちた。

「あっ」

慌てて落ちた紙を拾いに行ったそのとき、

「はっ!」

完全に目を覚ました晴穹が慌てて起きた。
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