企画物BOOK

□全て君の物
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プチッと髪が引っ張られる痛みに、マホは、眉を顰めて手に持っている立体機動装置のトリガーを見た。丁度、指を通す部分に、長い髪の毛が1本絡まっていた。
頭頂部の高さで1つに纏めてポニーテールにしている彼女の髪の毛は、それでも腰の辺りまでダラリと尻尾が垂れ下がっている。その自分の髪を、サラリと手で掬う様にして、マホはポツリと呟いた。

「切ろうかな……」

調査兵団に入った頃は肩ぐらいまでしかなかった髪も、ダラダラと伸ばし続けていたらいつの間にかお尻の上ぐらいまでになっていた。
別に伸ばしていたというわけでもなく、特に理由が無いので切らなかったというのが正しい。
それと……いつも自分の髪に何だか嬉しそうに指を絡めてくる恋人の存在も理由の1つではあるが、別に髪を伸ばせと言われているわけでもないし、今みたいに何かに髪を引っ掛けるのもちょくちょくある。
そのうち大きな怪我に繋がる事だって考えられる……と、マホは決心した様に頷いた。

その夜、切れ味の良さそうな鋏を手に持ったマホは、どれぐらいまで切ろうか、と髪を1束掴みながら鏡の中の自分と睨めっこしていた。

「うん、まぁ、これぐらいまでは切ろうかな」

自分なりのポイントを見つけたらしく1人でそう呟くと、早速掴んだ髪に鋏で断ちを入れようとした。

ガチャッ……

突然ノックも無しに扉が開き、マホは鋏を構えた状態で扉の方に首だけで振り返った。

「あ、リヴァイ」

大して驚く様子も無く、マホは来訪者の名を呼んだ。彼がノックをせずに入ってくる事は最早日常的で、仮に着替え中だったとしても大騒ぎする様な間柄では無い。
当のリヴァイも、いつも通りの仏頂面だったが、マホの手に持たれている鋏の存在に気付くと、おもむろに眉を寄せた。

「おい。お前、何しようとしてやがる」
「え、何って、そろそろ髪の毛が鬱陶しいから切ろうかと……」

そうマホが説明している途中で、リヴァイがズカズカと部屋の中に入ってきて、彼女の鋏を持った方の手を乱暴に掴んだ。

「てめぇ……誰の許可を取ってそんな真似しようとしてるんだ?」
「えっ!?誰って、私の髪なのに誰に許可を……」

いきなり不機嫌になったうえによく分からない事を言い出した恋人を不気味に思いながらも、マホは至極正論ともいえる返答をしたが、リヴァイの眉間の皺は更に深くなり、冷たい灰色の瞳は今にも殺さんかの勢いでマホを睨みつけたまま、彼女の腰に手を廻しグイッと体を引き寄せた。

「切るな」
「え……」
「俺の許可無しに勝手な事をするな、と言ってるんだ」
「えー……」

不満がそのまま口から漏れ出てしまい、しまった……と焦りの表情を見せたマホに、リヴァイはニヤリと悪戯な笑顔を見せてきた。

正直『悪戯な笑顔』なんて可愛いモノじゃない。確実に獲物を殺しにかかろうとしてる獰猛な獣の狩りの顔だ、とマホは目の前の恋人を警戒心いっぱいの目で見つめ返した。

完全に戦意喪失したマホの手からスルリ……と鋏が取り上げられた。

「切れ味良さそうだな。この鋏」

相変わらずニヤリと不敵に笑ったままで鋏を褒めだしたリヴァイは、怪訝な表情を見せるマホの服をグイッと引っ張った。

「あっ……」

と、マホが声を上げるのと、リヴァイが彼女の服の襟口に鋏を入れるのがほぼ同時だった。

ジャキンッ……と、切り応えのある音がして、マホの木綿のワンピースの襟元がタラリと捲れ落ちた。

「なっ……!!ちょっとリヴァイ!!」

なんてことをしてくれたんだ、と抗議の声を上げるマホの晒された胸元に、リヴァイは鋏の先端を当てる。

「動くなよ。身を切っちまうだろうが」

皮膚に直接当たる冷たい鉄の感触と、鋭利な先端が僅かに胸を刺す微妙な痛みと、自分を睨みつける三白眼の冷たく鋭い瞳に、完全にマホは圧倒されて、息を呑む様にゴクリと生唾を飲み込んだ。

スルスルとマホの肌を這っていた鋏の先端を、リヴァイは持ち上げて、再び彼女の衣服に断ちを入れた。

「悪く思うなよ。これは躾だ」
「し……つけ?」
「もう2度と、俺の許可無しに勝手な事をしない様にな」
「やっ……」

ジャキ……と、また裁断音が響き、怯えた様子で瞳を閉じたマホを安心させる様にリヴァイは、彼女の唇にソッと口付けた。



ベッドの周りに、散り散りになって落ちている白い布切れ達を、寂しそうな目でマホは見回して、フゥ……と溜息を吐いた。
そんな彼女の隣では、肘を付いた手の平に頭を預けたリヴァイが、何処か満足気な表情でマホを見下ろしていた。

「服を切られた事がそんなに嫌か」
「嫌に決まってるでしょ。酷いよリヴァイ……」
「勝手に髪を切ろうとされた俺の気持ちが分かったか」
「勝手に……って私の髪だよ?」

マホの頭を中心に、ベッドに放射状に広がった彼女の黒い髪の毛を1束、リヴァイは掬い上げた。

「馬鹿言え。これは俺のだ」
「またそんな事言って……」

身勝手な事を言う恋人を呆れた顏で見やるも、見つめた先にあった穏やかな表情に、マホは毒気を抜かれて瞳を見開いた。

「俺は長い髪が好みだ」
「あー…。よく触ってくるもんね」
「お前の髪が、ベッドに広がってるのが気に入ってる」
「そ、そうなの?鬱陶しくない?」
「絡みついてくるだろ?こうやって」

掬い上げた髪をサラサラと流す様にしてみれば、名残惜しそうに何本かの毛がリヴァイの手に、腕に、絡まっている。

「お前の細胞が、俺を求めてるみたいで興奮する」
「うわ……その発想は無いわ。そこまで来たら立派な変態だよリヴァイ」
「ほぅ……まだ躾が足りなかったか」
「ご、ごめんなさい」

萎縮して肩を竦めるマホを、リヴァイはグイと抱き寄せた。
彼女の背に廻した手にも、頬がくっつき合うぐらいに密着した顔にも、マホの髪がサラリサラリと絡まってきて、また、リヴァイの中の情欲を刺激する。

「お前は、俺の物だ」
「も、もう分かったってば……」
「いや、分かってない。もう一度分からせる」

マホが何か言おうとする前に、リヴァイは乱暴に唇を塞ぎ、反抗する様にリヴァイの頭を押してきた彼女の細い手首は、再びベッドへと押し付けられてリヴァイの手によって拘束された。

YESもNOも聞かずに求めてくる恋人を身勝手だとは思うのに、マホの身体は嬉しそうに熱を帯びて疼き出す。
きっと、自分以上に自分の身体を知り尽くしているであろう恋人からの刺激に、溢れ出てくる声は、まるで自分以外の何かに支配された様で、その支配者であろう目の前の男を揺れる視界で見つめながら、マホは先程の恋人の言葉の意味を知る。

そうだ……
私の身体も細胞も……
全て君の物―…。



―END―




↓↓後書き&お礼文↓↓

リクエストを下さった鈴様、読んで下さった読者様、どうも有難うございます。
『髪の長い夢主』という所にスポットを置いて書かせていただきました!
健全Verと裏夢Verのセリフも頂いていて、だけど欲張りな私はそのどちらも欲しくなってしまいました汗)
なので、R-18では無いですが、行為後のおしゃべりシーンに頂いていたセリフを少し改変してしまいましたが、入れさせていただきました。
今回の兵長、変態チックで書いててちょっと興奮しました//すみません、変態で汗)
R-18じゃないけれど、エロスを感じる表現とかが結構好きなのですが、今回はそういうのを少し意識した感じになってます。中途半端ですみません。
ここまで読んで下さった読者様、素敵なリクを下さった鈴様、有難うございました!!
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