企画物BOOK

□全力ヒーロー
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「うう……重い。」

背中をリヴァイに踏まれたままのアルミンは苦しそうな声を上げる。

「リヴァイ兵長、アルミンを放して下さい!」
「何言ってる。お前等がマホを放すのが先だろうが。」
「くそっ……リヴァイ兵長が相手でも俺はやるぜ……」

グッと拳を握るジャンを見上げて、アルミンは必死で声を絞り出した。

「ま、待って、ジャン。僕が話す。」

その言葉に、リヴァイは眉を顰めて自分の足元に視線を落とした。

「時間が惜しい。何か言いたいなら的確に言え。」
「り…リヴァイ兵長は、人類最強であって、皆から尊敬されるべき兵士長です。それなのに、こんな大人気の無い事をして、恥ずかしくないんですか?後、マホはリヴァイ兵長のセクハラを嫌がっています。もしマホの事が本当に好きだと言うのなら、マホの嫌がる事は止めてあげてください。僕達もマホが好きだから、マホを守りたいいいいいいいいいいいいい!!!???」

ガッとリヴァイの足がアルミンの頭を踏みつけ、アルミンが声にならない様な悲鳴を上げた。

「長い。的確にと言ったのが聞こえた無かったのか。」

完全に地面に突っ伏したアルミンの体を廊下の端に寄せる様に足蹴にすると、リヴァイは前に立っているジャンに視線を移した。

「お前はどうされたい?」
「俺はマホを守る。それだけです。」
「そうか。なら安心しろ。マホは俺が守っている。」
「いや、貴方からマホを守るんですよ!!」
「訳の分からない事を言ってないで、怪我をしたくなければそこを退け。」

リヴァイはジャンとの距離を詰めると、腕組みをして彼を見上げた。ジャンも負けじとリヴァイを見下ろした。
 だんだんとリヴァイの眉間の皺が深くなり、全身がプルプルと震えだす。

「てめぇ……首が疲れるだろうが!ふざけやがって!!!」

足を高く上げたリヴァイの回し蹴りがジャンの首にクリティカルヒットした。

「ゴホッ……」

白目を剥きながらジャンは、アルミンの上に重なる様にして倒れた。
リヴァイはそんなジャンの前に跪き、気を失っているだけだと確認するとすぐに立ち上がった。

「フン。俺の事を見下ろすからだ。」

そう冷たく言い放つと、リヴァイは先へと進んで行った。



「よし、マホ!もうキッチンだ。」

そう言ってエレンはキッチンに繋がるスイング扉を開いた。

ドサドサドサドサッッ

「うわあああああああああああああああ」

突如扉の上からゴロゴロと雪崩の様に転がり落ちてきた芋がエレンの体の上に容赦なく降り注ぐ。

「え、エレン!!」

あっと言う間にエレンの体は大量の芋の下敷きになり、プルプルと芋の山から出ていた腕もパタン、と力が抜けた様に落ちた。
 慌ててマホはエレンの体の上に重なる芋を1個1個退けていたが、突然後ろから伸びてきた腕に体を持ち上げられ、そのままヒョイと宙を浮く様に芋の山を越えてキッチンの中にストンと着地した。

「り、リヴァイさん!?」
「やっとお前を取り戻せた。無駄な時間取らせやがって。」
「そ、そんな事よりエレンがっ!!」

入口の芋の山に再び向かおうとするマホの体をリヴァイはガシッと抱きとめる。

「大丈夫だ。放っておけ。」
「だってエレンが芋に潰されて……」
「あんな罠に掛かる方が悪い。それに、もっと悲惨な状態になった奴もいる。」

その言葉と、今此処にリヴァイがいるという事にマホはハッとして、リヴァイを睨んだ。

「まさか、皆も……」
「殺してはいない。」
「そういう問題じゃないです!何でリヴァイさんはいつも私をこうやって追いかけ回したり、助けてくれてる人達を傷付けたりするんですか……」

自分に力があれば、とマホは悔しそうに睫毛を伏せて下唇を噛んだ。
 ただでさえ昔から、人並み以上に行動がノロく、運動神経なんてものは全く備わっていなかった。調査兵団に来てからは、そんなマホを見兼ねて色んな人が手を差し伸べてくれ、特に104期生は気に掛けてくれていた。
 今回も、そんなマホを救う為に皆は力を合わせてくれたというのに、結果、皆がリヴァイに完膚無きまで傷めつけられたのだ。
 リヴァイはマホを抱き抱えたまま、彼女の頬に指を這わせる。それを、振り払う様にマホはフイと横を向いた。
 ピク、とリヴァイの指がその位置で止まる。

「なぁ、マホ。お前は今俺に怒ってるのか?」
「当たり前です。」
「そうか。だが、俺は一人でアイツ等は集団だぞ。どちらかといえば俺の方が分が悪いとは思わないか?」
「だって、リヴァイさんは人類最強なんでしょう?よく知らないですけど!皆の上司でもあるわけですし、よく知らないですけど!!リヴァイさんの方が有利じゃないですか!」
「よく知らないを連呼するな。まぁいい。人類最強かどうかなんてのは今は関係ねぇからな。」

 横を向いていたマホの頬を、今度は両手で包むとグイッと自分と向い合せた。
 
「な、何ですかっ……」

 悪態をつこうと、リヴァイを睨みつけたマホだったが、自分を見つめるリヴァイの瞳がやけに真剣そうで、思わず口を閉じた。

「俺は、どれだけ強い奴が相手だろうが絶対にお前を守る。アイツ等みたいに簡単にやられたりもしねぇ。」
「何言ってるんですか……」

真面目な顔で何を言うのかと思えば、耳がむず痒くなる様な言葉を浴びせられ、マホは戸惑った。
 リヴァイは隙を見つけた、とでもいった様子でポカンとしているマホの頬にチュッと口付けると、彼女の体をギュッと抱きしめた。

「だから、お前は俺に守られてろ。他の奴等なんかに守られるな。俺だけで充分だ。」
 

 ドキドキする……

自分の中で高鳴る鼓動を苦しそうにしてマホは瞳を閉じた。
 いつも顔を合わせれば、何かと身を寄せて来て、気を抜けば体をベタベタと触ってきたり卑猥な発言をしてきたりと、正直迷惑な言動が過ぎる男なはずだが、それでも、この男の腕の中だけはいつもマホをドキドキとさせるのだった。


キッチンの入り口で、その光景を黙って見つめていた6人の傷だらけのヒーロー達は誰もが心の中でこう叫んでいた。

『もう守ってなんかやらねぇ!!!!』

―END―
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