企画物BOOK

□Un autre 『ailes』
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 後頭部に置いている手で、彼女の髪を結っているヘアゴムと探って、それをスルリと解いた。
 拘束を解かれた髪がファサリ……とマホの肩から流れ落ちてきて、リヴァイの顔にも、首にも、サラサラと金色の雨を降らす。
 顏にかかる彼女の髪を払おうとして手に取り、リヴァイはその美しさに見惚れる様にマジマジと金髪を眺めた。
 
 いっそこの金糸で二人の体をグルグルに縛ってしまったら、もう、くだらない嫉妬なんてせずに済むのだろうか……。

 そんな病的な感情まで沸いてきて、リヴァイは心底自分が駄目な男だと実感した。

「リヴァイさん?」

そんなリヴァイの心境など知らずに、ただただ心配そうに見つめてくる愛おしい彼女の頬を指でくすぐる様にして撫でると、擽ったそうにマホは笑った。

「男の嫉妬は醜いな……。」
「そんな事ない。リヴァイさんの嫉妬は、私嬉しいです。」

思いもしなかったマホの言葉に、リヴァイはポカンとする。あんな理不尽な嫉妬心を見せられて嬉しがるなんて、自分の彼女は一体どうしてしまったのか、と心配すらしてしまった。

「お前……大丈夫か?」
「大丈夫だと思う……けど。リヴァイさんの嫉妬って、それはつまり、私の事を愛してくれてるって事だから……その、お客さんと喋るな、とかは無理だけど、リヴァイさんが嫉妬してるの見ると、大切にされてるなって思っちゃう……。嫌な女かな、私…。」

マホは頬を染めながら、とても恥ずかしそうに、申し訳なさそうに、ポツポツとそう説明した。

何だよ、この可愛い物体は……。

これが無意識なのだから本当に罪な女だ、と思いながらもリヴァイは、自分と付き合えるのは彼女以外いないだろう、と確信した。
 もう一度、彼女にキスをするとそのまま舌を滑りこませた。深く深く口付けを交わしながら、リヴァイは体勢をゴロン、と変えると今度はマホを下に、自分はうつ伏せの形で彼女の上に覆い被さった。

「んっ?リヴァイさんっ……。」

自分の背中に回っていたリヴァイの手が太腿を撫ぜだした事に気付き、慌てて唇を離してリヴァイの手を制止させようとマホは試みた。

「あの、今凄く変な事しようとしてる?」
「変な事って何だ。抱きたいと思ってるだけだ。」
「だ、駄目!!何でここでっ……。」
「お前が煽ったからだろ。」

制止も聞かず事を進めようとするリヴァイにマホは本格的にマズイと思ったのか、ありったけの力をこめて、リヴァイの下から抜け出した。
 机の上にうつ伏せに倒れたままのリヴァイは不機嫌そうにその隣で立っているマホを睨んでいる。

「てめぇ……。いい度胸してんじゃねぇか。」
「もう!まだ掃除が終わってないし、大体店の中でそういうのは駄目!!だから……。」

そこまで言ってマホはモジモジと照れ臭そうに俯いて、小さな声で言った。

「後で……。ベッドで一杯愛して下さい。」

リヴァイはスクッと立ち上がると、もう拭き終っているテーブルから順に椅子を裏返して乗せだした。

「リヴァイさん?」
「手伝う。早く終わらせるぞ。」

テキパキと掃除をしだすリヴァイを見ながら、マホは

 何て可愛い人なのだろう……

と、密かに思った事は口にしなかった。

「おい、マホも早くテーブル拭いて行け。」
「はいっ!!」

沢山嫉妬していいから、沢山束縛していいから、沢山愛していて下さい……。


―END―



 
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