企画物BOOK

□紳士なんていない
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 長椅子の上で、向かい合った体勢で互いの身体をしっかりと抱き締めながら、マホとエルヴィンは余韻を楽しむ様に、心地良い沈黙に身を委ねていた。

「そういえば……雨、止んだな。」

あれだけ賑やかしかった屋根の上の合唱は、いつの間にか終わっていて、ハメ殺しの窓に涙の様に付いていた雨粒も、再び笑いかけた太陽の光でキラリキラりと輝いていた。
 あれだけの事をしておいていながら、勿論今も抱き合ってはいるが、いつもと同じ口調のエルヴィンに、マホは少し不満気にしながら言う。

「あの、エルヴィン団長。今更言われてもって思うかもしれませんが、私、重い女なんです。」
「君、雨女の次は重い女なのか?」

呆れて笑いながら、エルヴィンはマホの髪をクシャクシャと撫でる。

「うっ……でも、その、私、誰にでも抱かれる様な女と思われたら嫌なので……」
「それは、私も嫌だな。こんな場所でしかも勤務中に欲情しておいて何だが、私も誰でも抱く男じゃない。」

組織を纏めるトップである男が、仕事中に部下とまぐわっていた等、どこをどう考えても紳士的とは言い難い。

それでもいい。それでいい。
最初から紳士なんていなかったのだ。

「でも、そろそろ戻らないと、皆心配しますね。」
「駄目だ。もう少しこうしてたい。」

男として正直になれば、彼女を愛したい気持ちだけでいっぱいになる。
当然、それだけを抱いて生きていける程身軽な身分では無いが……

今は、もう少しだけ……。

―END―

↓↓下にてお礼文&後書き↓↓

読んで下さった方、リクエストを下さったリンゴ様、有難うございます。
【裏夢エルヴィン団長で紳士的な団長希望】との事で、こんな感じのお話しにさせていただきました。最初から最後まで紳士な団長にしようかとも思ったのですが、雄としての欲求に素直になってしまう団長というのが書いてみたくなりまして汗)私の欲望大爆発です。すみません汗)
ここまで読んでくださった皆様、素敵なリクエストを下さったリンゴ様、どうも有難うございます。
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