20万打企画用

□アメとムチの使い様
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「…」
「…」
「…」
「…銀さん、神楽ちゃんが寝込むことなんて今までありましたっけ」
「…いや、風邪引いても気合いで治すヤツだからな」
「…ですよね」


燦々と太陽の輝くとある日中。万事屋は前代未聞の事態に陥っていた。それは昨日の夜、神楽が志村家に行ったことから始まる。
神楽が寝る押し入れの引き戸を閉じ、銀時は居間へ戻ってソファに寝転がった。


「で、結局神楽は全部食ったのか?」
「一口食べた後気を失いましたが、何を勘違いしたのか喜んだ姉さんが口に突っ込んだのをベルトコンベアーの如く飲み込んで完食してましたよ」
「……マジでか」


押し入れのある畳の部屋の襖を憐れんだ目で銀時は見つめた。
これも全ては、この前行ったスノボ旅行でサディスティック星のお姫様に会ったのがいけなかった。いや、先に手を出したのは神楽だからもちろん悪いのだが、如何せん罰の度合いがキツい。ドSだドSだとは思っていたが、親友にまでドSとは、もう根っこからドSなんだと思いました。あれ、作文?

ピンポーン


「依頼の方ですかね。…はーい今出まーす!」
「このタイミング、なーんか嫌な予感すんだよね」
「やっほー神楽生きてるー?」
「…だと思ったぜ」
「あ、はは…こんにちは、名前さん」


いつもの隊服に身を包み、元気いっぱいな笑顔を向ける名前。手には白い箱をぶら下げていた。


「神楽は生憎誰かさんのせいで死にそうですぅ」
「あらら、新八ダメじゃん、ちゃんとお姉さんの躾しないと」
「できるわけないでしょう!」
「ってか自分の親友にまでドSで銀さん感心しちまったよ」
「えー?だって小さい頃習わなかった?やられたらやりかえすって。常識じゃん?」
「「…」」
「あれ、何黙ってんの?」
「「イエ、別ニ」」


サディスティック星ではハンムラビ法典が常識なんだ…と2人が遠い目をしている時、神楽が寝込んでることを察した名前は持っていた箱をテーブルに置いた。


「と、言ったものの、人々は悲しみを分かち合ってくれる友達さえいれば悲しみを和らげられるとも言うし、神楽に渡しといて」
「これは?」


新八が恐る恐る訪ねると、内緒!と可愛らしい笑みで交わされた。銀時は箱の見た目から甘いものだと感づき開けようとしたが、名前の「銀さん?」の低音に仕方なく手を離した。


「じゃ、神楽によろしくっ」


爽快に出ていった名前を居間から見送って、さてどうしたもんかと微妙な空気が漂っていると、ガラッ!っと襖が開いた。


「名前…来たアルか?」
「おー。たった今帰ったぜ」
「神楽ちゃん体調はどう?」
「朝よりは平気アル」


たしかに血色の良くなった顔で、神楽はふああっと大きな欠伸を1つ。顔洗ってこいと言う銀時に目を移した流れで視界に入った白い箱。


「その箱は何アル?」
「名前が神楽に、って」


何だろう、とボサボサ頭のまま神楽が箱を開けてみると、中には大きめにカットされたフルーツがキラキラ光るなんとも美味しそうなタルトがワンホール入っていた。


「「「うおおおお!」」」
「ごっさ美味そうアル!しかも高そう〜!」
「こんな綺麗なケーキ初めて見ましたよ!あ、これお店の名前ですかね」
「どれどれ…うっわ!これターミナル近くに新しくできたケーキ屋じゃねぇか!行列で何時間待ちとか言ってたぜ?」
「さっすが名前ネ!!」


キャッホー!と小躍りし出した神楽に昼前まで残ってた不調感は見当たらず、いつもの元気な彼女へ戻っていて。


「名前のヤツ、親友にまでアメとムチの使い方が半端ねぇな」


ハンムラビ法典学ぼうかな、と銀時と新八は思ってしまった。




 

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