20万打企画用

□花見は何度してもいい
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「春だねェ」
「春だなァ」


河原沿いに咲き誇る桜の木に、思わず止まって見惚れた。風に散って舞う桃色を目で追いかければ、ふわりと川に落ちる。


「日本人で良かったって思う瞬間だよね」
「人で良かったな、名前」
「どういう意味!?」


失礼な言葉を吐いた兄を一睨みして、さっさと歩き出す。空には花びらが舞い、地面には絨毯のように花びらが敷かれ、視界一面が春だった。所々花見客がいてドンチャン騒ぎをしている風景もまた春ならではだ。真選組の花見は一昨日だった。今年は万事屋と鉢合わせはせず、平和(?)な花見だった。


「名前」
「何…」
「あれ」

ぎゅっと手のひらを握られ後ろに仰け反った名前。すぐに沖田に支えられたためひっくり返ることはなかったが。一体なんだともたれ掛かっている沖田を見上げれば、彼は楽しそうに河川敷を指差している。

「出店だ!」
「何か食おうぜィ」
「食べるー!」

握られたままだった手を同じように握り返し、背中をそっと離した。 土手を軽快に降り、視界に広がるは出店の数々。花びらの舞う中に聞こえる元気な客呼びの声、美味しそうに頬張る子供の笑い声。ここも春真っ盛りだと沖田と顔を見合わせ、まずは焼きそばの出店に走った。




「テメーらァァァ!仕事中なのに花見たァいい度胸じゃねェか!」
「え、なんでトシ兄知ってるの?」
「土方の野郎もついにストーカーの仲間入りですかィ」
「ストーカーじゃねェよ!鏡見てみろ!全身に桜の花びらがついてんだよ!」
「あ、ホントだ」
「名前頭に付きまくってるぜィ」
「取って取って」
「ちょっと待ってろィ。あ、土方さんコレお土産」
「あ?ああ、悪ィな」
「いえいえ。名前、庭行って取るぜ」
「そうする。トシ兄あとでみんなで食べようね。たこ焼きも買ってあるからね」


土方に荷物を持たせ、仲良く庭へ向かった双子。のペースに流されること数秒。


「ってなんで荷物持たされてんだ!おいまてアホ双子ォォォ!」


その後敷地内で花びらを散らしながら逃げ回る双子と、刀を振り回して追いかける土方の姿が見られたとか。出店で買った食べ物は、そんな3人を縁側で見ていた近藤の側にちんまり置かれていて。庭に咲いている桜に、その下でやっと向かい合った3人を見て「春だなぁ」と近藤は笑った。




 

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