審神者
□はじまりはじまり
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審神者。さには。さにわ。
文字にしても音にしてもピンとこない。
そんな私が「審神者」だなんて、他の誰でもない、私自身が信じられなかった。
ねえ神様、あなたの声を聞き取るのが私の役目なら、どうして何も教えてくれないんですか。
時は過ぎ、現在。
「おはよーなまえ。今日もいい天気だよ」
「…おはよう、加州」
「あれ?久しぶりだね、その呼び方」
顔を照らす日の光が眩しくて、目を細めながら答える。部屋の襖を清々と開けた張本人は返ってきた声に懐かしそうに笑ったが、寝ぼけているなまえには何が可笑しかったのか分からず、え?と首を傾げた。
「ほら、最初の頃は俺のこと“加州”って呼んでたでしょ?」
「ああ、そう言えばそうだったねえ。懐かしいや」
「懐かしいね。なまえ、もう着替える?」
「うん」
「じゃあ外で待ってるから、早く来てよ。俺お腹減っちゃった」
ボサボサななまえの髪の毛を丁寧に手櫛で整えてから、加州は腰を上げて廊下に出る。襖が閉まって加州の姿が見えなくなる、その瞬間。
「いつもありがとう、“清光”」
「!」
振り返った加州が見たのは、眠たそうな、けれど優しく笑む自分の主の姿。
「っ、なまえ――!!」
「ぐふっ」
「あーあ、またやってるよ。俺、ちょっと行ってくるね」
「頼むよ。さ、みんなはご飯を運んでくれ」
「燭台切、なまえたちの味噌汁どうする?」
「入れてしまっていいよ。さっき大和守が行ったから、もうすぐ来るはず」
「早く起きろ!!!」
「「ぎゃ!安定!刀振り落すな!」」