土方妹

□ようこそ、いらっしゃいませ
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江戸でキャバクラといったらすまいるが有名だ。では江戸でクラブといったらどこか。

それはかぶき町に存在し、全てのホステスの憧れの場所、クラブ此花

すまいるが気軽に入れる店なら、此花は一見さんお断りの敷居の高い店。店長が幕府の官僚と繋がっていたり、はたまた攘夷志士の幹部と取引をしていたり、店に一歩入ったらそこは治外法権だと噂になっている。しかし噂は噂。
江戸ナンバーワンであるクラブは、今夜も客が絶えることがない。

ホステスの年齢層は20〜30代。すまいるが10代〜20代前半なので、それに比べたら高い方だが、その分大人の雰囲気を味わえる。

実を言えば、此花はすまいるの姉妹店で、お互いヘルプで往き来することもある。すまいるのキャバ嬢はお姉さんと慕い、此花のホステスは妹のように可愛がる。それが双方を蹴落とすことなく、平和に共存させている秘訣でもあった。

今日はヘルプに此花からホステスが1人、すまいるへと来るらしい。キャバ嬢は自分の仕事よりそちらが楽しみで浮き足立っていた。


「お妙さん、今日何かあるんですか?」

「ええ。今日はヘルプでお姉さんが来るんです」


にこり、本当に嬉しそうに笑うのはすまいるでトップの人気を誇る志村妙。その笑顔に当てられて赤面するのは、真選組局長近藤勲。


「そういやお妙さん、俺此花に知り合いがいるんですよ」

「あら、どのお姉さんですか?」

「名前は…」

「皆さん、来られましたよ!」


黒子が明るく声を出す。キャバ嬢はみなそちらに顔を向け、キラキラした目でその姿を捉えようとする。客の男たちはキョトンとしつつ、その方向を目で追う。


「どうも、こんばんは」


年若い女が入り口から姿を現す。途端黄色い声が上がり、男たちからも歓声が上がった。

艶やかな髪を丁寧に結い上げ真っ赤な花を挿し、同色の赤に金地の入った着物を纏う。唇には紅が引かれ、目元はキリリとアイラインが沿う。

彼女の名はなまえ。此花で指名率1位の人気ホステスだ。




 
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