運命の輪
□序章
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江古田高校。
それが私の通う学校の名前だ。
私は神社で宮司の仕事を祖父から継ぐ為、今は巫女の仕事に励んでいる。
それもあってか、プライベートでは高校生らしい時間を過ごせずにいる。
と言うより、友達が居ないのだ。
高校生活もはや2年。
周りは青春の風に煽られているというのに、私は全く微動だにせず、ひたすら窓に映る景色をこの狭い教室という箱庭からただ眺めることしか出来ないのだった。
「山田さんって近寄りがたいよね」
「霊感少女って言われて、なんか色々な技を繰り出すんだって。」
「こわいね〜」
事実、私には不思議な力が宿っており、昔から霊の類はつきものであった。
(あ、また地縛霊………)
『マミ子〜いつになったら待ち合わせの時間に来るんだよォ〜』
成仏の出来ない霊、悪霊化した霊、様々な霊を見るが、私はスルーしている。
関わったらろくなことがありゃしないのが目に見えている。
「あ、また怪盗キッドが鈴木次郎吉相談役に予告状だした!!」
「なになに?“貴公の保有する蒼薔薇の涙(ロサ・デラム)を頂戴しに参上する。怪盗キッド”……だって!!キャーカッコイイ〜!」
世間じゃ今では怪盗キッド旋風だ。
もはや社会現象にまでなりそうな勢いであるが、私はそんな世間を冷ややかな目で見つめていた。
(…………アホらしい。)
「お、花子ちゃ〜ん♡なぁに冷たい顔してんの?」
「……………黒羽快斗、その呼び方やめなさい。」
「相変わずクールだねぇ。なぁ、怪盗キッドって知ってるか?花子ちゃんはどうー……………」
「失礼ね。その辺のミーハーな女子と一緒にしないでくれる?それに、怪盗なんて…………」
怪盗なんて、サッサとこの世から消えればいいのよ。
そう言いたかったが、私はぐっと喉の奥に溜め込んで言うのを堪えた。
「変わってるな、お前。普通キャーキャー言うもんだぞ?」
「あなたに私の何が分かるの??」
「そりゃ可愛い以外なんも知らねーけど……」
「こら、快斗!!また山田さんに迷惑かけて!すみません、うちの快斗が………ほら、行くわよ!」
彼女は、中森青子。
黒羽快斗の幼なじみであり、同時に恋仲となりつつありそうな相手である。
幼なじみ同士の在り来りの恋だなんて私にはなんの面白みがあるのか分からないが、周囲はそれを面白がっている。
私はきっと、その逆できっと恋など訪れず、穢れを知らぬまま土に還る運命なのだと、もう随分前に悟った。
というのも、巫女というのは恋愛禁止である。
穢れなき乙女出なければ巫女は務まらないからである。
私が巫女という専門職を極めようとしている以上、恋愛は出来ないのだ。
まぁ、恋愛どころか親友の1人ですら居ないのだからその心配もなさそうであるが。