禁断の果実

□episode. 3
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私は、よくわからないが流れで工藤センパイの家まで来てしまった。

来てもいいのか?

工藤新一と言えば、あの高校生名探偵だぞ…?

そう簡単に上がって言い訳がない。


「だっ、ダメです!私、センパイの家には上がれませんっ!」

「別に良いじゃねぇかよ。どうせ誰もいねぇし。ってか、来ないし。」

いや、そう言う問題じゃなくてっ…!

「センパイのような有名な人の家に、私みたいな未熟者が簡単に上がっていい所ではないですし…!」

私は丁重に断ろうとする。だが、工藤センパイは私の腕をグイグイ引っ張った。

「いいから、ここが一番話しやすいんだよ!」

「いや、そうかもしれないですけど…!」

強制的に工藤センパイの家に上がることになってしまった。
私は玄関で思わず立ち尽くしてしまう。

「ほら、立ってねぇでこっちに来いよ。お茶でいいか?」

「あっ、はっ、はい!」

心臓をドキドキとさせながら私はローファーを静かに脱いで、キレイに並べる。

「うわぁ…。キレイな家ですね。」

「大分古いけどな。」

私は工藤センパイのいるリビングに入る。

「でも、テレビとかスゴい大きいし…。絨毯高そうだし…。私の汚い足でふんずけたら悪いなぁ…。」

私は絨毯の敷いていないフローリングを歩いてテーブルにあるイスに座る。


「じゃあ、話すぜ。」

工藤センパイが私の向かいに座って私を見る。

私はドキドキと緊張させながら、工藤センパイの言葉に耳をすませる。


「順を追って説明する。10年まえのロジャース家の事件と今回の人斬りクライドは、やはり関係している…と、俺は考えている。あくまで推測だけどな。」

「全く接点がない2つの事件が…ですか?」

「端から見ればあまり関係無さそうに思うが、実はそうでもなかった。犯人から先に言えば、ロジャース家の血縁関係だ。」

私はその言葉に驚く。
口をあんぐりあけて、その奇想天外な工藤センパイの発想力と推理力が、私を驚かす。

「で…でも、ロジャース家は、家族同士で殺し合いになって、みんな死んでしまったんじゃ…?」

すると、工藤センパイは探偵の顔になってこう言った。



「いたんだよ。たった一人だけ、殺されていないロジャース家の一員が。」


私はゴクッ!と、お茶を飲む。
工藤センパイのその表情が、この部屋の空気を緊張感に変える。

「誰なんですか?その、ロジャース家の生き残りは?」

私は興味深々で聞く。

「ちゃんとした証拠がないから、なんとも言えない。ただ、ひとつだけ言える事がある。」

私は工藤センパイの言葉を聞き逃さず一文字一句聞く。
すると、驚きの言葉が出る。












「お前のその眼、どうした?」












「えっ…」











まっ…。


まさか…。



『あなたにはっきり言うわ。この事件で、あなたが人生のドン底に叩きつけられることは間違いないわ。そして、哀しい真実を知ることになる。悪いことは言わないわ。手を引きなさい。』


『この事件から手を引け。強制はしない。』


『私と黒羽くんはあなたに忠告しましたわ。あなたが後悔しようと、知りませんわよ?』




この事…だったの…?


いや。

信じたくない。

覚えてない。

私が何をしたって言うの?

まさか、工藤センパイは本気で…私を…。



「ロジャースという名字はアメリカ人に多い名前だ。で、ロジャース家と言うのは、日系のアメリカ人で構成された暗殺一家。瞳は若干日本人離れした深い藍色。俺はお前を最初に見てから怪しく思った。それで、俺は高木刑事に調べてもらった。当時幼かった六歳のお前は、証人保護プログラムを受けて、名前、住所、国籍、すべてを変えて新しい自分になった。」


私は…。



否が応でも、この真実をいつか知ることになっただろう。

でも、私には重圧が重すぎた。


「当時の警察は、ロジャース家の子どもだと分かっていたが、逮捕するわけにもいかない。だから、警察病院かどっかで脳を刺激し、都合のいいように記憶を消したんだろう。物的証拠はもうでないだろう。だが、警察の調査書にはきっちり書かれていたみたいだしな。状況証拠は揃っている。」


工藤センパイは…。

私を最初から人斬りクライドの犯人だって、薄々勘づいていたんだ…。
それなのに、私は自分が犯人とも知らずに犯人を捜していた…。



バカじゃん。


「…工藤センパイ…最初から、私だって勘づいていたなんて、さすが…名探偵ですね…。全然、自分が犯人だなんて、実感がない…。何でだろ?暗殺一家の血が流れてるから、人の死を憐れむことが出来ないのかな…。なのに、なんで探偵なんかやってたんだろ?全然逆の世界じゃない…。私…」


それ以上、言葉は出なかった。
ただ、涙が出そうで必死に堪えている。

工藤センパイ居るところに、迷宮入りナシ…。

この事件は、私の家族が呼んだのかな?


「泣くなよ。だからと言って、俺にはお前がいままで解いてきた事件を偽りだと思ったことは一度もない。お前の正義感が、いままでの事件の解決の糸口になったんだ。」

工藤センパイは私の頭を優しく撫でた。
こらえた涙も、拭いきれないほど溢れてきた。

「わたし…これからどうしたらいいか分かんないよ…。また人を殺しちゃうかもしんないよ…。どうしよう…」

私は手を震わせる。
テーブルの上に、生暖かい涙がこぼれ落ちていくその姿は、誰にも止められなかった。
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