禁断の果実
□episode. 1
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入学式。
私はこの日、高校生になる。
桜の花びらを浴びながら、革靴の音を鳴らしながら歩いて校門を抜ける。
「ハイハイハイハイ!どいて、どいて!」
「キャアッ!」
疾走と駆け抜ける少年。
こんなに優雅に、のんびりと歩いていたのに、自分の世界を直ぐに壊されたような。
「やべぇよ、放送委員なのに遅刻だぜ!」
そういいながら少年は去った。
(在校生…か。)
センパイがこんな日に遅刻なんて、していいものなのか…。
私は教室に向かうと、1-Bのクラスが今日から私のクラスになる。
新しく着たセーラー服が身を引き締める。
「おっと、君新入生?」
「え…あ、はい。」
振り返ると、さっき遅刻だ遅刻だって言っていたセンパイだった。
急いでいたのか、さっきスレ違っていたのも覚えていないのだろう。
「ちょっとさ、手伝ってくんねーか?」
「あ…でも、私にできるか…」
「オレが教えるから、こいよ!」
そう言われて、私は教室にバッグを置いてセンパイの後ろを走る。
「あの、私は何をすればいいんですか?」
走りながら聞くと、センパイは答えた。
「オレの手伝いだけしてくれればいいから!」
…なんか、新入生なのにいきなりこんなこと…。
別にいいんだけど。
「あ、黒羽くん!早くマイクセットして!…えぇっと、後ろの子はもしかして…」
「オレの助手!君、そこのマイク四本とって!」
「助手?」
「あ、はい!」
私は指示された通りに忙しなく動く。
そして、またまたセンパイの後を走ってついていく。
「わりぃな!疲れねぇか?」
「私は大丈夫です!」
幸運なことに、運動音痴な方ではないから。
「お前あれだろ!えーっと、なんだっけ?工藤新一と肩を並べる女探偵!」
「えっ、えぇ、まぁ…」
工藤新一。
それは、日本屈指の高校生名探偵。
同じプライベートアイとして、尊敬している。
一度は会って、事件を一緒に解いてみたい。
その工藤新一の女ver.と言われているのが、誰であろうこの私。
世間では、もし事件を起こしてこの2TOPに出会ったら、監獄行き決定も同然だと騒いでいる。
その尊敬する工藤新一と、一時期恋人疑惑もあったが、本人には一度も会ったことはない。
「スッゲェな!お前みたいなやつがこんなところに来るなんて、学園のアイドル間違いなしだな!」
「いや…」
学園のアイドルだけにはなりたくない。
その言葉を飲み込んで、私は入学式の会場となる舞台にマイクをセットする。
「サンキュー!後はオレに任せろ。えーと…教室までの行き方分かるか?」
「大丈夫です。来るときに道を覚えましたから。」
「さすが。」
「じゃあ、センパイも頑張ってください。」
私は一足先に会場を出た。
元来た道を辿り、教室に戻ると、どうやら私を待っていたようで、先生やみんなが私を見る。
「どこに行ってたんだね?」
「…お手洗いに行ってました。お待たせしてすみません。」
私は丁寧に言うと、自分の席にゆっくりと座った。
そこで、担任から説明を受けるが、クラスのみんなはじろじろと私を見てくる。
それもそのはず。
メディアで目にする人物が、目の前に居るのだから。
「では、これから会場に移動するので、廊下に出席番号順に並びなさい。」
みんなは立ち上がり、私の方に寄ってくる。
特に、女子。
「ねぇねぇ!もしかして、工藤新一と肩を並べる女探偵って、あなたなの?」
見れば分かるだろう…。
「工藤新一と肩を並べるなんてとんでもない。私は、まだまだ未熟だよ。」
そんなことを話ながら、また会場の方まで歩く。