禁断の果実
□episode. 6
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「お前…どうしたんだ、その頭…血…」
「私の頭から出てきたの。大丈夫、別に死なないし、このくらい…」
血が出てきて血の気が失せてしまったのか、貧血になってガクッと倒れる。
だが、キッドであるセンパイが私を抱えてくれていたお陰で地面に倒れることはなかった。
「おい、今すぐナースコールいれた方が…」
「いいの。平気だから。」
私は右手に持っていた石を片手でギュッと握りしめて粉々にした。
それを見たセンパイも驚く。
「お前…力強いんだな。」
「探偵兼暗殺者ですから。」
私はニコッと微笑む。
すると、センパイは白いスーツの胸ポケットに手を入れて何かを探ると、窓から入る月光に反射して輝く蒼い宝石、蒼天の薔薇(スカイ・ローズ)が手に乗っていた。
「何ですか、それ。」
「美しい女性には、美しい宝石を。」
センパイはキッドモードに切り替えた。
その低い声が、私の心を癒した。
額からは血がドロドロ流れていて、少々不格好ではあったが。
キッドは私の耳たぶに蒼天の薔薇(スカイ・ローズ)を満足げに着けた。
前々から私につけさせてあげたぁいとか言ってたし。
「お似合いですよ、お嬢さん。」
「…怪盗……キッド…?」
いけない、いけない!
私は探偵!
なんで敵である怪盗にメロメロにされないといけないのよ、バカ!!
私は心の中で自分に喝を入れた。
「ふっ。こーんな盗んだもの付けたって嬉しくも何とも無いですよーだ。…でも、キレイ…」
私は自分の耳に光る宝石を窓に反射させて見ると、突然男の顔が写し出された。
私は叫びを堪えて飲み込む。
「誰だ!!」
キッドは白いマントで私ごと包み込んで隠す。
「あ、怪盗キッドだ。生で見るのは初めてだな〜。同じ犯罪者として尊敬するよ。」
お兄ちゃんだ…
私は心の中でそう思うと、キッドのマントから出た。
「ガブリエル、おひさ…でもないか。」
私はキッドの前で両手を広げた。
その姿に兄もキッドも驚く。
「ハハハハハ!心外だな。まさか、犯罪者同士で出来てたなんて、こりゃ失敬。」
兄は柄にもなく笑う。
「もう、言いなりにはならない。でも、この人は殺さないで。」
「あーぁ、つまんない情に流されちゃダメってあれほどいったのに…。その頭に埋め込んだ石も、意味無かったか。ざーんねん。」
「私は…家族に恵まれてないし、友達って言う友達も多いわけじゃないし…。でも、そんな私を、彼は…キッドは受け入れてくれたから…。だから、もし殺すなら、私を殺して。」
そう言うと、後ろにいたキッドが私の肩を持つ。
「…そんなこと、誰にもさせない。」
キッドはそういってトランプ銃を取りだし、兄の背後にある窓ガラスを割る。
兄もそれに反応して懐からサイレンサーつきの銃を取り出してドンパチ殺り合う。
私はキッドに抱き抱えられながら、そのまま割った窓から飛び降りてハンググライダーでそのまま飛んでいってしまった。
兄はとっさに銃口をキッドの方に向けたが、動くし、ライフルでなくては狙いにくかったため、諦めた。
「ちょっと、どうするの?病院から勝手に脱け出しちゃってさ。」
「このまま名探偵の所に行きましょう。」
「名探偵…って、工藤センパイのこと?」
「って、オレの家にいるんだけどな!」
そういってキッドは加速する。
私はキッドにお姫様だっこされたままキッド(=センパイ)の家に直行した。
「着いたぜ。」
センパイは私をおろして、ハンググライダーをたたんで家にすんなり入っていった。
そんなに堂々と家に入ってもいいのかと若干気になったが、そのままスルーして入る。
センパイはネクタイをほどき、シャツとズボン姿になると、工藤センパイがいるところに案内された。
「ここだ。」
私はノックして部屋の扉を開けた。
「…失礼します。」
私とセンパイは一緒に部屋に入ると、工藤センパイはベッドの上で寝ていた。
「思ったより、平気そうですけど…。」
「今は寝てるからな。起きてるとすげぇんだよ。そうとうお前のアニキが仕掛けたのが強烈だったんだろうな。」
「そう…なんですか。ホントに…申し訳ない…。私、工藤センパイが治るまで、ここに泊まります!良いですよね!」
「は…?はぁっ?!」
センパイは少し驚くのに時間がかかった。
私はセンパイの腕をを掴んだ。
「大丈夫です。家事のお手伝いもいたします!…怪盗キッドの事も、秘密にしますから。ね?」
私は輝く瞳でセンパイを見ると、センパイは渋々OKしてくれた。