The Prince Of Tennis.

□ヒラヒラと。
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今日も今日とて夜中まで仕事になってしまった。2ヶ月前辺りから同棲をし始めた恋人の越前 リョーマはもう眠っているだろう。小さく溜め息をついてから玄関に手を伸ばして中へと入ると、玄関に越前の靴下が寂しげにチョコーンと置いてあった。
訝しげに眉を潜めてその靴下を拾い上げ『アーン?』とつい溢す。
そのまま廊下を進んで行くと、廊下の真ん中にもう片方の靴下が転がっている。
『…珍しいな』越前は割りとズボラな方なのだが、ここまで酷くなかったはずだと頭を傾げる。
その靴下も捕まえて、越前の部屋を開けてみる。パチンッと音をたてて電気を付けてみるがベッドには愛しい恋人の姿が無く、何かあったのではないか…という不安が跡部の胸の中を支配し始める。
そのまま踵を返して早足でリビングへと向かう。中へ入るとすぐさま今度はズボンが落ちているのに気が付く。








『…何があったんだ?』







そのズボンも手にとって、キッチンの方に向かうと今度は上着が落ちている。
益々訳が分からなくなって混乱してきてしまう。靴下、ズボン、上着…と落ちているとすれば残るはパンツだ。
『まさかな』そんな変な想像をした跡部は苦笑いを浮かべて自室へと向かう。








(越前いねぇな)







いつもならば、お出迎えは無くとも寝室に寝ているのだ。
なのに、寝室に居なければ越前の洋服たちが部屋に散らばっている。
『実家に行くなんて行ってたかァ?』会社でも眉間に皺を寄せてしまう出来事があり疲れが来ているのに、家に帰ってからも眉間に皺を刻み込む嵌めになるとは思わなかった。
自室の部屋を開けて電気をパチンと付ける。








『っ…!嘘だろ?』







扉の真下には越前のであろう、パンツが一枚ヒラリと落ちている。
『本当になんだって言うんだ?アーン』額に手を添えて首を横に振るが訳が分かるわけも無く、持っていた他の洋服もポイッとパンツの所に置いてやった。
携帯電話を胸ポケットから取りだしながら、ネクタイを片手で器用に弛める。
RRRRRRと無機質な機械音が電話から聞こえてくるが、越前が出る気配がない。
ピッと掛けるのを止めると同時くらいに『チッ』と舌打ちしながら携帯電話をベッドの上へと投げつけた。









『頭回らねぇから風呂でも入るか』










バスローブを持って部屋から出ると、お風呂場へと向かった。
お風呂場も跡部らしく一般家庭よりも大きな物を使用しており、温泉が出るようにしてあるのだ。
全面ガラス張りの空間で、越前は最初とても抵抗していたのを思い出す。
ササッとスーツを脱ぐと洗い物を貯めておく入れ物に放り投げた。
中に入り蛇口を捻ると温かいお湯が身体を温めてくれる。
キュッと気持ちの良い音を立ててお湯を止めると、ジャグジーがずっと泡立っていた事に気が付く。
ジーッとその泡の中を見ると、愛しい恋人が小さく丸まって湯船に浸かっていることに気がついた。








『おい』
『…おかえり』
『何してる。服脱ぎ散らかして』
『間に合って良かった』








ザパァッと越前が湯船が身体を出すと、いつから入って居たのだろうか少しだけピンク色になっている裸へと視線がいく。
久々の越前の裸は仕事疲れしている跡部にはとても刺激的であった。
『跡部さん』『アン?』名前を呼び、背伸びしながら跡部の首もとへと腕を絡めると顔の近くへと跡部を導いてやる。
視線が合う高さで跡部が困惑していると『happy birthday』と綺麗な訛りの無い発音で呟かれる。
跡部が驚いた表情を浮かべていると『プッ』と越前の笑い声がついつい口から溢れてしまう。








『10月4日か』
『そう。早く帰ってこないから祝えないかと思った』
『ありがとうな。越前にしては粋なことしてくれんじゃねぇの』
『何それ』
『あの服の真相教えろよ』








『知りたい?』意地悪そうな瞳で見つめられると、そんなことどうでも良くなり自身が反応してくる気さえしてきて視線を反らす。
『教えろ』短く答えを述べると絡めた腕をほどいて再び浴槽へ浸かると跡部とは逆側を向いてしまう。
訝しげに眉を寄せていると『高いもの買えないし。プレゼントにオレあげる…』ジャグジーの音で掻き消されてしまいそうになる程の小さな声が耳に入ってくる。
パシャンッと音を立てて跡部も湯船へと足を踏み入れる。越前を後ろから抱き締めてシャンプーの香りがする髪の毛へと顔を埋めて『最高のプレゼントだな』と笑う。
抱き締めていた腕をほどいて、越前の柔らかいが引き締められている胸の尖りに指を滑らせるとピクッと身体を揺らした。
『感じるの早いじゃねーの』ククッと意地悪い声音で笑って越前の中心へと手を伸ばそうとした瞬間ズンッと越前の体重が重くなるのを感じる。








『おい、越前?……おい』
『気、持ち悪…』
『プレゼントもらい損ねたか』









よくよくしっかりと見ると、顔や身体が火照っているのがよく分かった。
跡部は渋々といった表情で越前をお姫様抱っこして、お風呂場から出ていった。
一体何時間待っていたのかと、呆れた気持ちにもなったが越前だけにしか出来ないサプライズだと小さくほくそ笑んだのは内緒である。


























(んっ…ッ!?やっ、何)
(アーン?誕生日プレゼントくれるんだろ)
(ァッ!も、だ…め…っスよ)
(なんでだよ)
(日付変わってる、じゃん)
(……知らねぇよ。そんなこと)
(ッあ、ちょ…ダメってば…ンッ)
(身体は正直だなァ?越前)
(も…バカ…っ)





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