小説(弾丸)

□海を飲む
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 ボクは何を勘違いしていたんだろう。
 死神と呼ばれたボクを受け入れてくれる人なんて居るわけがない。

 …でも、日向クンなら理解してくれると思ってたんだ。
 彼なら…。

 あぁ。それなのに。

 早く逝こう。それが今、ボクがすべき最善の行動。
 希望であるみんなの枷になるくらいなら。
 彼に愛してもらえないならば。
 この最悪な絶望の中で死ねば、きっとこれまでボクのせいで犠牲になってきた人たちは救われる。
 そうだ。始めっからボクは希望を持って死んではダメなんだよ。
 絶望のどん底の中で、独り、寂しく、惨めに死ななければいけない。
 それほどの罪を、ボクは犯してきたのだから。
 ボクは決して許されることのない、生まれながらの罪人。

 だから、君。
 ボクのことは、記憶から永遠に消し去ってくれ。
 誰の心にも残ってはいけない。
 まして、あんなに優しい彼の胸の内になんかに、こんな汚いボクが残ってしまってはいけない。
 どうかどうか、ボクを忘れて。
 笑って生きていってくれ。
 ボクではないステキな誰かと結ばれて、幸福に人生を終えてくれ。
 それだけを、切に祈るよ。



ありがとう。
好きになってしまって、ごめんね。
さよなら。




end.

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