小説(弾丸)

□ふたりのよる
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「……ぁ、ふ、…ん……」

 美しい星々が散りばめられた夜空の下。明かりの消えたコテージの中から、艶めかしく切ない嬌声が小さく上がっていた。

「…ひ、なた……くん…、ふぁっ、ん、……あ…」

 その声の主は、狛枝だった。ベッドの上でだらしなく服をはだけ、身体をびくびくとひくつかせながら、…自慰をしていた。時折、想い人の名を戯言のように呼ぶ。

 狛枝の頭の中には、日向の姿が曇りガラスの向こうに居るようにゆらゆらと浮かんでいた。

 その日向くんがどんな表情をしているのかはわからない。でも、これは浅ましい僕の妄想なんだから、烏滸がましいけど、僕が望んだ通りの日向くんを作り上げることができる。

 例えば、本当に絶対に有り得ない話だけど、…日向くんは僕のことが大好きで、毎晩優しく僕を抱いてくれる…なんてシチュエーションとか。
 例えば、…これはちょっとだけマニアックなテイストで、少し長くなるんだけど、僕と日向くん以外のみんながこの島からいなくなっちゃって、しかも、島からの脱出手段も全然見つからない。絶海の孤島で僕ら2人っきりになってしまった設定の中、若い衝動に突き動かされ、性欲をどうしても堪えきれなくなった日向くんが、無理矢理僕を犯してしまう…とかいう感じの筋書きとか。
 後者はちょっとストーリーに凝り過ぎちゃったかな。あは。


 …とにかく狛枝は、最近こうやって日向のことを想いながら、夜な夜な火照る身体を自分で慰めていた。
 彼に触れたい気持ちを、触れられたいという昂まりを、独りで処理し続けていたのだった。
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