小説(弾丸)

□ふたりぐらし《番外編》
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 狛枝の覚えている範囲の話を聞き、少し俺の身の上話なんかを話しながら過ごすと、時間はすぐに過ぎていった。「眠くなってきちゃった。」と、狛枝が押し入れに籠もって眠ってしまったので、俺は部屋の片付けを済ませ夕飯を取った。さすがに荷物運びで疲れていたため、10時を回る前に俺も寝仕度をしようと布団を置いている押し入れを開けて…頭を抱えた。そこには、綺麗にたたまれた俺の布団の上で、猫のように体を丸めてすよすよと寝息をたてている奴がいた。

 …どうすりゃいいんだ。

 揺すっても叩いても起きない。仕方なく狛枝の下から布団だけを引っ張り出そうと、布団と布団の間に手を差し入れ持ち上げる。

「あ、軽いな。」

 そうだった。コイツ軽いんだった。
 眠っている狛枝を乗せたまま布団を下ろし、そっと広げる。押し入れから出したのはいいが、これからどうしようか。

「このまま寝る…とか?」

 いやいやいや。新生活初めての夜を、幽霊とは言え、何故出会ったばかりの男と添い寝しながら過ごさねばならないのか。
 狛枝を起こして、押し入れに戻ってもらうのが一番だろう。早速体を揺すりにかかった。

「狛枝。起きてくれないか。」

「…んぅ。」

「狛枝。」

「………(すやすや)」

 …ダメだ。起きる気配がない。なんという眠りの深さ。
 まてよ、こんなに眠りが深いのなら、このまま抱きかかえて押し入れに戻しても何の問題もないんじゃないか?問題ないどころか、それが最善策だ。いやはや、狛枝の睡眠力に万歳。
 というわけで、早速この眠り王子を寝床にお返ししてやろうと、脇の下に腕を差し入れた。

 
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