小説(弾丸)
□キミの星になる
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「ねぇ日向くん。ボクが死んだら、悲しい?」
「は?」
「日向くんは、ボクが死んだら、悲しんでくれる?」
それはあまりにも唐突で、そしてあまりにも衝撃的な質問だった。真っ直ぐに俺を見つめる狛枝の瞳の色だけをよく覚えている。
「どうしたんだよ、急に。」
「何でもないよ。ただなんとなく聞いてみたくなったんだ。」
そう言うと狛枝はいつものようにふにゃっとした笑顔を作ってみせる。
「…」
「で。どうなの?日向くんは、ボクが居なくなったら悲しい?それとも嬉しい?」
「ばっ、バカ!嬉しいわけ無いだろ!大切な奴が死んだら、悲しいに決まってる…!」
「…本当?」
「当たり前だ。第一、そんなこと考えたくもない。」
「どうして?ボクだっていつかは死んじゃう時が来るよ。神様じゃないんだ。ずっと永遠に生きていられる訳がないよ。」
「それは…、わかってる…。」
「本当にわかってる?」
どもる俺を畳みかけるように、確認するように狛枝は迫ってくる。
こいつに話の主導権を握られるのが癪で、たまらずに言い返してやった。
「〜〜っ!じゃあ逆にきくけどな、お前は俺が死んだらどうするんだよ?しかも何十年も後とかそんな話じゃなくて、明日とか、数時間後とかに死んだら!」
「え…?」
「有り得ない話じゃないだろ?突然誰かに襲われたり、訳の分からない病気にかかったり、散歩中に車に牽かれたり…」
「い…っ、いやだっ…!」
俺の言葉はいきなり飛びついてきた狛枝によって遮られた。頭を俺の胸に押し付け、震える手で必死にしがみついてくる。
「やだ…やだよ…居なくなっちゃ、やだ…!」
「狛枝」
「日向くんが居なくなったら、ボク…っ、ボクはっ…!」
仕舞いにはとうとう泣き出してしまう始末。自分からサラッとこんな質問振っておきながら、俺から聞き返すと子どもみたいに取り乱してしまう。まぁ、狛枝らしいっちゃらしいけど。
なんて自己完結している場合ではない。とにかくここはこの困った恋人をどうにかしなくては。