小説(弾丸)
□【長編】ふたりぐらし #1
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…違和感を感じた。
入り口からすぐ目の前にあるキッチンはいたって普通だった。部屋を出る前と何ら変わりはない。
問題は奥にあるリビングだった。
リビングと言っても、フローリングの部屋ではなく、六畳分の畳が敷かれた和室である。その部屋の隅に、布団が一式こんもりと山を作るようにして落ちていた。たしか寝具は荷物運びの時、一番始めにリビングの壁側にある押し入れに全て収納しておいたはずだ。家具のセッティングをしている間、俺は押し入れには手を付けていないし、先に述べたとおり、荷物の運搬は全て自分1人で行った。だから今布団がこのような状態になるはずがないのだ。俺が外にでている間、何者かが部屋に入り、押し入れを開けたとしか考えられない。
帰ってきたとき、俺は鍵を開けて部屋に入った。出かけるときに鍵をかけたのだから当然だ。もし俺以外の誰かが外からこの部屋に入ったのだとしたら、施錠を解かなければならない。そして中からまた鍵をかけたということになる。…ということは。
押し入れを開けた奴は、まだこの部屋の中に居る…?
俺はゴクリと生唾を飲んだ。こんな狭い部屋の中で身を隠せる場所といえば…。
ユニットバス。
押し入れ。
そして、あの布団の下。これくらいだ。
「…一カ所ずつ見ていくか。」
俺は意を決して、部屋の中に足を踏み入れた。