作品-二部-

□猟奇的なカノ…ジョ?
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【猟奇的なカノ…ジョ?】


「は、はたけさんっ!ず…ずっと好きでした!付き合って下さい!!」

任務を終えてフラフラと帰宅途中に立ち寄った商店街で、いきなり通せんぼされた俺は、またか…と頬を掻いた。
人目がある所での告白は逃げも無理に断る事も難しく、更には直ぐに噂が流れるから酷い話が面倒に思う。それでも、昨今の忍び事情は世知辛く、良くない噂が流れると仕事が減るという理由から無視も出来ない。
本当に面倒な時代になったもんだ…とつくづく思う。

「ごめーんね、俺好きな子いるから」
「…っ!ご、ごめんなさい!!」

得意になった困り顏でキッパリと断ると、瞳に涙をいっぱい溜めてながらも走り去って行く女の子。
こんな気不味い空気を作った彼女は、この場に居ないから分からないんだろうけど『ごめん』と謝るくらいならこんなところで、告白なんかしないで欲しいんだけどね。結局、また新たに噂が生まれたワケだ…それも公衆の面前で女の子をこっ酷く振ったはたけカカシってね…もう、ホント勘弁して欲しい…。






「あの!はたけカカシさんですよね?」
「…はぃ?」

それでも一々気にしてなんか居られないから、早々に商店街を抜けようと早足で歩いたいたら、今度は後ろから声をかけられた。
俺のげんなりとした気持ちなんかお構い無しって感じ…もしかしたら余裕がないのかも知れないけど、顔を真っ赤に赤らめた女性が次に何を言うのかなんて分かりきってる。

「好きです!良かったら付き合ってもらえませんか…?」
「…」

ほら、やっぱり…。
でも、一日に何度か告白されることはあったけれど、商店街で立て続けにされた事はなかった。
商店街に何かジンクス的なものでもあるのか…なんて、考えていたら目の前の女性は気恥ずかしいのか、両手の指をモジモジと絡めながらこちらを見つめちゃってる。

「あの…」
「あーごめんね。俺、好きな子いるからさ」

とりあえずは、さっきの子と同じ返事をしておこう。
また噂されるのかぁ…と思いつつ、顔にはそれを一切出さずに今度は俺から立ち去ろうと振り返っていた身体を元に戻した瞬間、腕を掴まれ中途半端な向きで止められた。

「それでも構いません!」
「いや、あのね…」

そういう事ではないのだと、言い切って立ち去ってしまいたいが、怒りに指をポキポキと鳴らす五代目様の姿が頭をよぎり、何も言えなくなる。
先程の告白を聞かれていたのかも知れない。まるで、そう答えるのが分かってたみたいだった。
無言がしばらく続くと、泣きそうな顔をし始めて今度こそ困り果てる。

「俺…「あーーー!!!カカシ先生ってばこんな所にいたんだってばね!!さ、修業行くってばよ!」
「あ!」

女性に掴まれていた腕とは逆の腕を掴んで来たのは、かつて教え子であり今は部下のナルトだった。
無理やり演習場の方へ引きずって行くので、必然的に女性の腕が離れる。後ろから名残惜しそうな声が聞こえたけれど、此れ幸いと引き摺られるまま大人しく付いて行くことにした。







ズンズンと前を進む度に金色の頭がふわふわして、キュッと絞った額あてから伸び黒い紐がゆらゆらと揺れる。前を歩いているからわからないが、綺麗なブルーサファイアが前を見据えているんだろうと見なくても分かった。

「全く、カカシ先生ってば隙があり過ぎるんだってばよ!」
「はぁ…」
「初めて会った日なんか、下忍がつけた罠に引っ掛かるし…」

うん、お前の言い分は最もだと思う…思うんだけどね。その罠をつけたのは、お前だし。どれだけ実力が有っても、まだお前は下忍だから…なんて、口煩い元教え子に心の中で反論しながら緩む事のない歩調に着いていく。


「聞いてんのか、カカシ先生!」
「聞いてるよ、今度から気をつけるから…」

納得がいかないが、助けてもらったのは事実だ。
ここは大人しく言う事を聞いておこうと、深く頷く。

「じゃあさじゃあさ、新しい忍術教えてってばよ」
「お前の頭にはそれしかないの…?」

足を止めて振り返ったナルトの顔は、期待に満ち溢れていて、ある意味でコイツを尊敬した。
よくもまーそこまで、修業したいと思うよね。

「あれ?ナルトとカカシ先生!!」
「あっ!サクラちゃん!!」
「よ、サクラ」

ここでも元教え子に発見された。
サクラの方は火影様のお使いを済ませた後だったようで、また火影様のところに行かなくてはいけないらしい。
どうせ同じ道だからと、サクラも加わり、俺の周りは一人でも煩いナルトに加えて変な所で騒がしいサクラに挟まれ大分騒がしくなっていた。






「で?二人は何してるんですか、こんな所で…」
「ニシシっ。俺ってばカカシ先生にすんげー新術教えてもらうんだってばよ!」
「こら、誰も教えるなんて言ってないでしょーが…」

ナルトが一人で勝手に言っていただけで、俺はまだ何も言ってないと言っても両側にいる二人は全く聞き耳を持つ気配がない。
この感じ…ちょっと懐かしいけど、その分すっごく疲れそう…。

「…ふーん、そうなんだ。あ、そういえばカカシ先生」
「ん、何よ?」
「『付き合い始めた女』がいるって専らの噂ですけど、本当なんですか?」

最近はサクラも色づくお年頃にでもなったの?月日は早いもんだね〜。あ、昔からか…なんて、一人で感慨耽っていると、サクラがキラキラした目でこちらを見ていた。
何、このデジャヴ…。

「うーん…。まぁ、間違ってはない…かな?」
「本当なんですか!?キャー、どんな人?やっぱり大人っぽい?」
「あーうん、敢えて言うなら可愛い」
「へぇー、意外!これは、いのに知らせなきゃ!!バイバイ、ナルト、カカシ先生!!」

台風一過の如く走り去っていくサクラに、火影様の用事は良いのかと言ってやるべきなのか迷って止めておく。
サクラがいののところに行くのを見届けると、ちらりと横にいるナルトを見た。







「なぁー先生…」
「なぁに、ナルト」
「サクラちゃんって…」
「サクラがどうかした?」
「彼氏、出来なさそうだってばよ」

サクラが消えて行った方向を見ての一言だった。
きっとサクラが聞いたら五代目直伝の重い拳がナルトの腹へ食い込んでいるに違いない。幸いな事に、サクラは今居ないけど…。
ウンウンと悩むナルトを尻目にサクラの行く末を考えてみたけれど、女は男が思っている以上に強かだから何とかするだろうという結論が出た。
その事をナルトに伝えようかと思ったけれど、ナルトの関心は既に別の所にあるようで先程とは違う…何やら神妙な顔つきでこちらに見た。

「それとさ…」
「なに?」
「新術は、家に帰ってから教えてくれってばよ」
「…了解」
「あとさ…」
「まだあるの?」
「布団のシーツ、買いに行きたいってば…」
「なんでよ?」
「あの柄は無いと思うんだってばよ」
「…今日行く?」
「行く」

夕暮れも終わりそうな時間帯の比較的に人通りの少ない路地では、俺たち以外に誰もいない。
しばらく歩くとナルトから手を繋いで来た。
目指すは、布団屋。
隣にいるのは、可愛いけれど好奇心旺盛な猟奇的とも言えるべき恋人。





end

➖➖➖➖➖
後書き

考え事してたら思いついた甘くないお話。
猟奇的って、暴力を奮う人のことではなく、好奇心旺盛的な人の事をいうんですね。






➖ちょっとした補完➖
・嫉妬したから助け出したんだあって修業をみてくれる約束はありませんでした。
↑ナルトのついた嘘
・カカシ先生の恋人は、扱いずらい好奇心旺盛なナルト…男の子なので、彼女とか女という表現は不自然。だから、サクラの問いにすぐに答えなかった。
・二人は同棲生活してます。しかも、二年前から…つまり、第一部から。






ここまで読んで大丈夫だった方はオマケをどうぞ!
※会話文

「あ、やっぱり新術教えてあげようか?」
「ホントだってば?」
「うん、しかも絶対に役立つやつ」
「おぉ!!」
「ただし、修業が始まっても文句言わないこと!言っても続けるからね」
「どんと来いってばよ!!…って、うわぁ!?」

カカシに押し倒されるナルト。

「じゃあ、始めますか?あ、ベッド行く?」
「ちょ、これってば…これってば、術じゃねぇえええ!!!???」




あの後、ナルトはカカシに美味しくいただきました。

end

何があったのかは、ご想像にお任せしますw





. 150820 再掲載

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