一部
□遠くの君を
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【遠くの君を】
遠くから見れば、俺の存在なんてひどくちっぽけなモノでしかない。
上忍同士の飲み会の帰り道。いつもより明るい暗がりに、ふと気がついたように視線を宙に向けた。
「今日は、月が真ん丸だな…」
久しぶりの席だったからか、自宅で飲んでいる時より酔ってしまった。
銀色の男は、千鳥足で月を追い掛けるように歩みを続ける。まぁ実際は、家に帰っているだけなのだが…。
「賑やかだと、酒が進むのが早くってさぁ…」
誰に言うでもなく独り、狭い路地を悠々と歩いていくカカシ。月を見上げながら、カカシは金色の少年を思い描いていた。
近くにいれば、その存在が大きいせいで確認もせずに歩けるのに…遠くに行くと、なんだか心許ない気がして探してしまう。
見つけた時の安堵感と、見えなかった時の喪失感。
その思いは、月に感じる思いと少年に抱く想いにピッタリと当てはまった。
「んー、あれ?」
考え事をしていたら、何故かそこは少年が住んでいるアパートの部屋の前。
酔いもだいぶ醒めてきてから、このまま瞬身を使って家に帰っても支障はない。
「でも、やっぱりちょっと不安なんだよねー」
そう言って、軽快なチャイム音を鳴らすためボタンを押した。
-遠くの君を-
自分の胸に誘いに来ました。
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後書き
今日の月が綺麗だったんで、つい・・・。
20150618 改稿
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