一部
□素敵な苗
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【素敵な苗】
小さな芽が出て日々成長していくコレと、アイツが重なって見えて・・・。
自己満足かもしれないけど、贈らずにはいられなかった。それに大きくなって収穫するときの、アイツの顔を見てみたいってのがあるんだよね・・・。
だから、気持ちと一緒にこの想いも受け取って。
『大好き・・・』
カーテンのない窓から、風がふわりと靡く。
必然的に窓を向くと、そこには半ば期待したカカシ先生の姿があった。
「よ!」
「おっす・・・」
カカシ先生が来てくれるのは嬉しいけど、大体が大体野菜を持って来るから今日も野菜かと、うんざりした表情で見るとその手にはいつもの野菜籠はなく、代わりに少し土に汚れた植木鉢があった。
「どうしたんだってばよ・・・ソレ」
「ん、これ?…ナルトへのお土産」
「お土産って・・・」
見れば、カカシ先生の上忍ベストは植木鉢みたいに土で汚れてた。
(もしかしなくとも、任務の後で立ち寄った?)
「と、とにかく、上がれってばよ!」
「ううん、今日はコレを届けに来ただけだったから・・・もう帰るよ」
「もう、帰んのかよ・・・」
そう言って不満そうに先生を見上げれば、困ったように目を細めて頭を撫でられた。
(困らせたいワケじゃないのにな・・・)
俺ってばいつもそうだ。
我儘言って、カカシ先生を困らせちまう。カカシ先生は、それで良いんだって言ってくれるけど、やっぱり良くないよな?
「今日はもう遅いしね・・・お休み」
「・・・おやすみなさいってば」
我儘言わずに見送ろうとして、チラリと苗を見た。苗は、本当に小さな目が出てるだけで心許ない。
明日肥料を買いに行かなきゃな。何て逡巡して、何気なく瞬きをした瞬間、先生はもう窓にいなかった。
ぽっかりと浮かぶ月に、窓枠にポツンと置かれた植木鉢が影を色濃く作る。
その影だけが、カカシ先生が夢じゃないことを教えてくれた。
end
201407 改稿