一部
□一緒と別離
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【一緒と別離】
いつも夜空に輝く星達も、今日だけは静かになりを潜む。
なかなか会えない二人を思って、凄く大事な時間を邪魔しないように、そっと二人を見守ってる…。
・・・ま、でも甘い夜を過ごす恋人達にはそんな気遣い無用かな。
今日は割と簡単な任務だけで終わり、早々に家に帰った。
いつもみたいに過ごしてるけど、今日が何の日か忘れてるわけじゃない。だけど、そういうのに一番はしゃぎそうなナルトは、この日に気づいてないのか、気づいてないフリをしてるのか一向に行動する気配がない。
この日にかかせない笹も俺は用意していなかった。それも、原因の一つかも知れない。
「ナルトー」
「なんだってば、カカシ先生?」
「ここに座って?」
洗濯物を畳んでいたナルトを呼び寄せて、後ろから抱き込める位置に座らせる。
今日は一日中ずっと雨が降っていたから願い事をした子供達はもちろん、恋人達も心配しただろう。
きっとみんなも、こんな風に思ってるんだろうな・・・。
『織り姫と彦星は無事に会えるだろうか・・・』なんて。
お伽話を信じなくなった今でも、俺はこの時ばかりは心配する。
だって、大好きな恋人と一年振りに会うか会えないかだよ?
俺だったら、一年もナルトと離されたりでもしたら堪えられない。もう無理矢理会いに行っちゃうかも…。
それが出来ない状況だったら、絶対ナルト不足で倒れるね、俺。
だから、何だかんだで心配だから何でもないように装ってナルトに聞いてみる。
「ナルト、夜も雨降るのかな?」
「さぁ・・・?先生任務でもあんの?」
「いや、ないよ」
それでも、何だか連れない返事。むしろ、夜に任務?なんて別の事を心配してるし…。
イベント好きのナルトらしくはない。やはり、気づいてないだけかもしれない。聞いてみようか…。
「ナールト?今日が何の日か、知ってる?」
「今日?知らないってば・・・」
思いきって質問した俺に返ってきたのは、拗ねたような声だった。
驚いて、後ろから抱き締めてたナルトの身体を持ち上げて反転させる。
こちらに向き直る形で座ったナルトは、俯き加減に頬を膨らませた姿勢をとってた。
「全く知らないわくじゃねーってばよ?あれだろ、願い事すんだろ?」
「うーん、本当はちょっと違うよ」
「嘘だ・・・。だって、里の笹にはいっぱい願い事が書いてあるってばよ」
ナルトは本当に七夕を知らないみたい。
無理もないか…。そんなことを教えてくれる大人は幼いナルトの傍にいなかったんだ。
だからって訳じゃないけど、暇だからってのを言い訳にして、しとしと降る雨音を聞きながら今日が何の日かナルトに教えてあげた。
すると、さっきまでのしょんぼりとした空気はどこかに飛んで行き、ナルトは俺の足の間からベランダへと飛び込んだ。
暑くなってきたとはいえ、まだ7月。
冷え込むとまずいから、タオルケットを片手に俺もベランダに出る。
「なぁ!カカシ先生!!」
「んー?」
「忍術で雲晴らせない?」
それは純真で単純な子供の考え。
好きな人に逢わせてあげたいという曲がりのない思い・・・。
「できなくもないけど、しない方がいいんじゃない?」
「なんで?」
「だって、もう逢った後でお楽しみ中かもしれないでしょ」
純真な思考の持ち主は、身体だけは一人前の男だ…ま、俺が教えたんだけどね。
だから、俺が言わんとする事が簡単に想像出来て、それ故に顔を真っ赤にして押し黙る。
「…ねぇ、俺達もしよっか?」
「・・・っ‼︎」
近くにあるソファーにナルトを押し倒して悠然と微笑えば、頷いて俺の首へと伸ばされる腕。
その事に至福を感じながら、目の前の恋人へと落ちて行った…。
END
ーー後書きーー
ヘタレたカカシ先生と家事出来るナルト…美味しいデス!
改稿20140314