一部

□眠るキミ
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【眠るキミ】

大切なモノほど失ってきた。
だから、これ以上失いたくないんだ。




白く清潔感のある廊下を死に物狂いで走る。後ろから看護師さんの叫び声が聞こえてくるけど、そんなのに構ってられない…!
看護師さんの声を聞きながら、走り続けると目的の部屋に着いた。


バンッ!!

勢いよく開けたドアの向こうに、眠る恋人の姿を見た。


「ナ、ナルト!?」


さっきまで無我夢中で走ってきたせいで呼吸が整わず、発した声は凄く小さくてナルトに届いているかどうかさえ分からない。酸素が足りない身体で、ノロノロとナルトに近づいた。


白一色に纏められた部屋に鮮やかな金色が映えた病室には、いつものような元気な声は聞こえず静かな呼吸音だけが聞こえた。




Sランク級の任務から帰って、火影様に報告していると、急にサクラが火影室に入って来てナルトのコトを知らせた瞬間、報告放り出して急いで病院に駆け付けた。


「もう、心配したでしょーよ」


寝顔のナルトはあどけない顔で、いつもの笑顔は見られないけど深刻な状態ではないことに安心して近くにあった椅子に腰掛ける。こっちは、短時間でビックリして安心してドッと疲れたっていうのに…。


「まったく、目が離せないんだから…」


頬を突くと、ナルトはむにゃむにゃと反応を返してくれた。
寝顔を飽きずにずっと見ていたいケド、任務報告の最中に飛び出して来たからすぐに戻らなきゃ…。


「はぁ…。めんどくさいなぁ」


怠け者の性分で、このまますっぽかそうかと思ったケド目の前で眠るナルトが、起きてこのことを知ったら怒るので渋りながら病室を後にしようとドアに手をやる。


「…カシせんせぇ…ちゃんと、しなきゃ…ダメ、だってばよ…!」


いきなりの寝言にびっくりしたのと、今の自分と夢の自分が頼りないことにがっくりして動きを止めた。思わず、ナルトを見ると幸せそうに笑いながら寝ていた。


「行ってきます」


そう言って、俺は病室を出た。





それから、10分で帰ってきた俺をナルトは笑って迎えてくれた。



end
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後書き
ナルトは、実は起きてました。

↓↓おまけ














ー10分後の病室ー


「もう!カカシ先生ってば聞いたってばよ!」
「んー?」


林檎をウサギさんに切りながら、怒っているナルトに相槌をうつ。


「カカシ先生、任務の報告放り出して俺んとこ来たってばね!?」
「うん、そうだけど?」
「そうだけどって…」

若干、呆れたように聞こえる声にカカシはムッとする。


「しょうがないでしょ?いきなり『ナ、ナルトが!!』なんて言われたら心配するに決まってるじゃない」
「でも!」
「でもじゃない、ほら林檎あーん…」
「あー…ん!」


有耶無耶にするためカカシは、ナルトの口にウサギさん林檎を押し付ける。しゃりしゃり...、林檎の砕ける音が聞こえて頬が緩む。


「美味しい?」
「ん、美味いってば」


あーんが、恥ずかしいのか照れているナルトは下を向く。


「…でも、やっぱり仕事をサボるのは良くないってばよ」
「…」
「そんなことされても嬉しくない」


拗ねたように頬膨らませるナルトは、哀しそうな顔をする。


「ごめんね、でも今度ナルトが倒れても多分俺は同じことするよ」
「…」
「お前が、倒れたら仕事どころじゃない。理解しろとは、言わないよ…ただ、それだけ俺はお前を失いたくないの」
てこと」
「なっ…!…うー、俺だってカカシ先生を失いたくないってばよ!」
「そっか」
「そうだってば!」

二人で笑いあえる。
それだけで輝く、この世界はキミがいるからで…。
キミがいないと、こんな風には笑えないと実感する。



「ナルトー」
「なんだってば、カカシせんせー?」
「…愛してるよ」
「ば、バカぁああ///」

end



201208 改稿
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