一部

□世界がキミを嫌っても・・・
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【世界がキミを嫌っても・・・】





商店街を大小二人の忍びが歩く。
大きい方は、本を片手に悠々を歩いているが空いた手は小さい方の頭に乗せられてピクリとも動かない。まるで、張り付いたように黄色いヒヨコのような頭の上を歩く度に上下している。
一方、小さい方はブスくれた顔を辺りに晒しながら、渋々といった様子で歩いていた。


夕暮れよりも少し早い時間は、商店街が混みいってしまうので、ナルトは嫌いだった。
特に子持ちは、嫌いだ。
己を指差して、我が子に醜い化け物には近付いてはいけない、などと教える声が堂々と聞こえ、人差し指を此方に向けているのが、わかるから…。
悲しい気分にならないようにするためには、遠回りして帰ることは何の障害でもない。しかし、カカシに捕まってしまえば、否が応でもナルトは商店街を通らねばならなかった。


「なぁ、カカシせんせー?」
「んー?」
「俺ってば急用思い出したから、先に帰るってばよ」
「・・・ま、それなら仕方ないか」


どうしても視線が気になるナルトは、とうとうカカシの手を払い除ける。
本当は、もう少し一緒にいたいけれど、惨めな自分を見られたく無い・・・そんな幼いなりのちょっとした意地が、ナルトに芽生える。
ナルトの言葉を信じたのか、カカシはナルトの頭に置いていた手を退けた。そのアッサリとした感じが、ちょっぴり寂しいと感じたけどナルトは笑って、カカシにサヨナラを言おうとカカシを仰いだ瞬間、ナルトの目に銀の光が降り注いだ。


「そんなに急ぐなら、俺が送ってやるよ」
「へ?」
「じゃ、行くぞ」


ワケもわからず、担ぎ上げられたナルトは一瞬でカカシの部屋にいた。「瞬身の術」で、移動したのだと無い頭で結論付けたナルトは、ハタと気付く。


「カカシせんせー・・・」
「んー?」
「ココ、俺の部屋じゃないってば」


そう、ナルトは嘘だとしても急用があると言ったのだ。そして、カカシは送って行くと言った。なのに、これはどういう事だろう?


「お前ね…俺をみくびってんの?あんなの商店街から逃げたい嘘だって事くらいお見通しだよ、俺は」


そう言って頭を撫でるカカシの手は、優しい。撫でられて、嬉しくなったナルトは静かにカカシの腹へ頭を埋める。


「でも、仮にも上司の立場にいる俺に嘘吐くなんていけない事だよねー」
「そ、それは!」
「うん。だから、俺の部屋で俺とご飯食べる事!わかった?」
「!・・・わかったってば!」


ナルトに与えられたお叱りは、ナルトが密かに望んでいたモノで堪らずに抱き付いた。
そんなナルトを支えながらのカカシといえば、どうやってこの子供を落とすか真剣に悩んでいるあたり、確信犯に近い。






カカシがナルトに、想いを打ち明けてキスするまで恐らく数時間…。
食事だけの筈が、お泊まりまで進展するのはカカシの作戦通り…。
更に運命的な事に今日は、9月7日。



誰もが認める二人の日…。



世界がキミを嫌っても・・・
-ボクは君を愛してる-



−−−−−−−−−−
後書き

ナルトが幸せでカカシ先生も幸せな日なら、それで良い。



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