捧げ物、頂き物
□背水の陣
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暗い部屋の中で、マダラは一人、宙をみつめたまま物思いに耽っていた。
白い髪は無造作に肩にかけられ、顔もやつれて生気がない。
時折近くにおいてある水を一口飲むくらいで、ほとんど動いていない状態であった。
少年だったオビトが地下通路に倒れていたのを見つけて介抱し、短い期間で彼を強い忍へと成長させた。
リンという想い人を失ったオビトは、迷うことなくマダラの計画に賛成し、忠実に、そして着実に準備を進めた。
今、もうオビトはマダラがいなくても計画を十分に進められる、つまりマダラは長門に輪廻転生されるまで待つだけ、ということだ。
もうすぐ、死を迎える。
死ぬ覚悟くらい幼い頃からできているマダラであったが、その脳裏には走馬灯のように今までの思い出が蘇ってきた。
幼い頃、弟たちと遊んだ事。
弟たちを戦で亡くした事。
父や母の事。
うちは一族の事。
柱間をはじめとする千手一族の事。
そして、オビトの事。
あいつなら大丈夫、あいつならできる。
そう思っていると、部屋の片隅に渦が現れ、オビトが帰ってきた。
「やったぞ、爺さん」
「ご苦労だった」
今日の任務を終えてホッと息を吐くオビトの瞳からは、出会って間もない頃の暖かいものが全く感じられない。
マダラはゆっくりとオビトから視線を下にずらし、ぽつりぽつりと語り始めた。
「お前はもう、オレが居なくなっても大丈夫だろう」
「なんだ急に」
「お前なら大丈夫だ、きっとやれるだろう」
「…もしかして爺さん」
「輪廻転生されるまで待つだけだ、問題ない……」
マダラが印を組み、マダラに供給されていた魔像のチャクラがどんどん弱まっていく。
思わずオビトはこういうしかなかった。
「リンのいない世界などただの地獄だ。だが、」
「オビト……?」
「爺さんと過ごした日々も、悪くなかった」
マダラの目が大きく見開かれ、印を結ぶ手が緩みかける。
オビトは柱間細胞から顔を出すと、マダラをじっと見つめた。
「計画は必ず成功させる。爺さんは安心してあの世で待ってやがれ」
フン、と鼻を鳴らしたオビトは、死にゆくマダラを視界から追い出すようにそっぽを向いた。
「期待しているぞ……」
消え入りそうな声でそういうと、マダラはそれきり何も話さなかった。
オビトはマダラの方を振り返ることなく、しばらく立ち尽くしていた。
「待ってろ、爺さん……」
小さな声でつぶやいた言葉には、深い憎しみや強い決意や悔しさが入り交じっていた。
背水の陣
もう元には、戻れない。
後書き
和オビト、アイコン感謝する。
アイコンだけではなくヘッダーや規制垢にも使わせてもらっている(こら)
お礼に書く小説がまさかこんな死ネタになるとは思わなかった。……ほのぼのしたかったのだが。
気に入ってもらえると嬉しい。
これからもよろしくな。