短編夢小説(NARUTO)

□一瞬の美
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ある日、デイダラは林の中を歩いていた。
これといって用があるわけではない。
ただ、同じ芸術家で、価値観は違うものの慕っていた相方のサソリの死に、少し考えるところがあったのだ。
決して、悲しいわけではない。
悲しいと言う気持ちの一歩手前の感情が、デイダラの体の中で渦巻いていた。

こういう感情を抱くことも、新しい作品に繋がる、とデイダラは考え、とぼとぼと歩きながら新しい作品を考える。
少量の起爆粘土を手に取り、サソリのことを考えながら、ああでもないこうでもないと作っては潰している。

(どうやらこの感情はそうとう複雑なものに違いないな、うん)

そうしていると、前方から気配が近付いてきた。
前方から攻めてくるようなバカはほとんどいない。
ならば、よほどのバカか、それとも一般人か。

デイダラは音も立てずに木の影に隠れると、様子を伺った。
どうやら、女のようだ。
手には薬草や木の実が入ったかごを持っている。
デイダラはそのおっとりとした様子に、忍ではないと判断し、木の陰から出て女の前に立った。
女はデイダラを見て、息を呑んだ。
端正な顔立ちに見とれたのもあるが、彼が忍だと一瞬で見抜いてしまい、怖くなったのもある。

「お前、美人だな。オイラはデイダラだ、うん。お前は?」
「ヒナタです」
「へえ、ヒナタか。なあ、オイラのこと、どう思う?」

ヒナタは少し頬を染めて、小さな声で答えた。

「美しい方だと思います」

その声がデイダラの耳に届いた次の瞬間、ドオオンと爆発音がした。
デイダラはそれを見ながら優しく微笑む。

「オイラもな、ヒナタはすごく綺麗だと思うぜ。綺麗なものほど、儚く散っていく……」

煙が消え、ヒナタのいた場所が見える。
少し凹んでおり、草は全て消えていた。

「オイラは思うんだ。いつか散って消えてしまうなら、いっそのことオイラがこの手で芸術にしてやる方がいいってな」

デイダラは嬉しそうに目を閉じ、空を見上げる。

「待ってろ。オイラもそのうちそっちに行くからよ」



その時は、忍の世界を驚嘆させるほど素晴らしい芸術になる。

見ててくれよな、旦那、ヒナタ……





もっと危ない感じにしたかったですorz
デイダラは美しいと思えるものを爆発させてしまうことが芸術だと思い込んでいるので、恋に落ちても相手を一瞬で爆破しちゃうんじゃないかなあと思って書いた作品。
なんか妙に清々しくなった気がします……(´・ω・`)

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