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『僕、宝石ってあんまり好きじゃないんですよね』
『ふぅん?』
『あれ、理由訊かないんですか?』
『訊いて欲しいのか?じゃあ、何で?』
『何だかとても腹が立ちますがまぁいいとしましょう。なんか、安っぽいじゃないですか』
『そうか?まぁ、そう言われれば、所詮ちょっと輝き強めの色硝子だしな』
『其処まで言うのもどうかと思いますけど……』
『安っぽいもどうかと思うぞ』
『まぁそうですが。で、僕は宝石より硝子細工とかの方が綺麗だと思うんです』
『うん、解らんでも無いな』
『と、いう訳で赤司くん』
『ん?』
『僕と一生を共にする決心が着いたら、指輪じゃなくて硝子飾りでお願いしますね』
『任せろ』

………そんな会話をしたのは、もう六、七年前になるか。
僕の目の前には、受験勉強の真っ最中、夕暮れの教室で話していた時の興味無さ気な顔では無く、してやったり、と口角を上げている赤髪の青年。

「ほら、お望み通り、指輪じゃなくて硝子飾りを持って来てやったぞ、テツヤ」
「…………何て言うか、君は何時まで経っても、赤司くんですよねぇ」
「当然だろう?」

彼に差し出されたのは、リングの形の硝子細工がついたネックレス。
まだ覚えてたのかとか、態々指輪の形の物を探したのかとか、そもそも本当に一生を共にする気なのか、とか。
訊きたい事は山程あったが、取り敢えず感情に任せて中学からの恋人の腕に飛び込んだ。


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