黒バス

□【雪の様な君へ】
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「うわ……寒い………」

思わず呟き、マフラーに顔を埋める。
高校に入って最初の冬。コートにマフラー、手袋と、完全装備で外に出ても、直ぐに寒さが襲って来る。
朝のこの時間帯が一番冷える…。そう思いつつ、通学路を急ぐ。早く学校に行って暖まりたい……。

……あぁ、そういえば。
寒いのが好き、と言う変わった君は、何時もこの時期になるとはしゃいで、コートも着ずに外に出たりしていた。
僕の知らない土地で、僕の知らない人達と、今も君は、変わらずはしゃいでいるのだろうか。

ふと、そんな事を考えた。
最近、また彼の事を思い出す事が多くなった。別々の高校に入り、新しい仲間達、新しい光と過ごす内に、段々と思い出す事は減っていたのに。こんなちょっとした事で君を想うくらい、あの頃、僕達はずっと一緒に居て、笑い合っていた。

あの頃と同じ様に、今も笑ってくれているだろうか。

「………!」

そんな事を思った瞬間。ポケットに入れた携帯が着信を告げた。
足を止め、携帯を取り出す。開いて画面を確認すると、そこには、今僕が想っていた人物の名。思わぬ偶然に、僕は目を見開いた。
震える指でボタンを押し、電話に出る。

「…は、い……。黒子、です…」
『あぁ、テツヤ?急にすまない』

赤司くんの、僕の記憶の中の声と全く変わらない声。裏返りそうな声を抑え、返答する。

「いえ、大丈夫です。どうかしたんですか?」
『テツヤ、僕は雪と言う物を初めて見た……!』
「え?」

珍しく興奮した様な声。久し振りだというのに挨拶もそこそこに話し始める所を見ると、大分はしゃいでいる様だ。

『東京では滅多に雪なんて降らないだろう?僕はずっと東京に居たから、雪を見た事が無かったんだ。いや、正確には積もっている所を、か』
「…そうだったんですか」
『あぁ。昨日から京都はずっと雪でな。朝外に出てみたら、積もってたんだ!』
「本当ですか?凄いですね」

子供の様に話す赤司くん。嬉しそうな声に、思わず笑みが溢れる。

『凄いだろ!?10センチも積もってるんだぞ!』
「……嬉しそうですね、赤司くん」
『あぁ!…わ、テツヤ、息が真っ白だ!!』

凄い凄いとはしゃぐ声。
良かった。遠く離れた京都でも、君は君らしくやっている様で。
そう安心したのと同時に、
あぁ、君は僕が居なくても平気なんですね。
そんな醜い考えも、浮かんでしまった。

『……テツヤ?』
「…っあ、すみません。ぼぅっとしてました」
『………やっぱり、迷惑…だったか……?』
「え?」


『迷惑かな、とは思ったんだが……。どうしても、テツヤに言いたかったんだ……』
「赤司くん……」
『ごめん。もう、切るから……』
「あ、待って、征くん!!」

中学の時、二人きりの時だけ呼んでいた、秘密の呼び方。咄嗟に口を衝いて出てきた。携帯越しに、征くんが驚いているのが伝わる。

『テツヤ……?』
「迷惑とか、そんなんじゃ無いんです…。ただ、征くんは僕が居なくても平気なんだなって、思って……」

段々声が小さくなって行く。
あぁ、言ってしまった。肯定されたらどうしよう―――――――



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