黒バス
□【雪の様な君へ】
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『……馬鹿だな、テツヤは』
「……え」
『平気な訳無いだろう。僕がこうして、一人離れた場所に居ても笑っていられるのは、テツヤ、君のお陰だよ?』
優しく、諭す様な声音。ゆっくりと言葉を紡ぐ。
『テツヤも、みんなとは違う高校に行って、新しい仲間と頑張っているんだろうなぁって、何時も思うんだ。そうしたら、あぁ、僕も負けない様に頑張らないとって思うんだ』
「征くん……」
『涼太達も、それぞれ頑張ってるだろう?きっとみんな、テツヤが頑張ってるのを知ってるから、頑張れるんだよ』
……嗚呼、そうか。
「………すみません。僕は勘違いをしていた様です」
『…そうか』
僕だって、そうだったんだ。征くんやみんなが頑張ってると思うから、僕もここまでやってこれたんだ。平気じゃないのを、平気なフリをして、頑張らないとって頑張って来たんじゃないか。
それぞれが、強くなる為に。今はみんな、新しい仲間と強くならないといけないんだ。
「………ありがとう、征くん」
『どういたしまして。……なぁ、テツヤ?』
「はい」
『また電話しても……いいか?』
不安そうな声。予想外の問い掛けに、一瞬固まってしまう。
「…………。」
『すまない、今のは忘れてくれ』
少し黙っていれば、慌てた様な声。今彼はどんな表情をしているのだろう、と想像して、笑ってしまう。
「ふふ………」
『………テツヤ?』
「構いませんよ。何時でも電話して来てください」
『!!…………本当に?』
「はい。本当です」
『……ありがとう』
本当に嬉しそうな声に、口許が緩む。
やっぱりいくら強がっても、少しは淋しい、と言う気持ちがあるのだろう。
「どういたしまして」
『ふふ、さっきと逆だな』
「あぁ……そうですね」
二人でくすくすと笑い合う。携帯から聞こえる征くんの笑い声がくすぐったい。
『………あぁ、もうこんな時間だ。すまないね、朝から……』
「いえ、大丈夫です。………それじゃあ、また」
『あぁ。またな、テツヤ』
軽く挨拶を交わし、通話を切る。携帯を閉じて、ポケットへしまう。
視線を前へやると、何か白い物がちらついているのが見えた。
「雪………」
ふわりふわりと、音も無く降り続ける。一面灰色の空から、次から次へと舞い落ちて来る。
「………征くん、東京も雪です」
小さく、遠い京都に居る彼に呟く。
電話も楽しいけど、手紙も楽しそうだなぁと、彼との連絡手段を色々と考えながら、止めていた足を前へと進めた。
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赤司くんと電話をした次の日。
寒い冬でも強く凛と咲く紅い椿が好きだった送り主を思い出しながら封を開けると、同様に椿が描かれた便箋が一枚と、写真が一枚出て来た。便箋には、
『白くてふわふわしていて、見ていると優しく、何処か幸せな気持ちになれる雪は、まるでテツヤの様だね』
とだけ、美しく整った文字で書かれていた。
気紛れで何を考えているのか良く分からない所は中学の時から変わって無いんだなぁと思いながら、写真を見る。
そこには、雪で出来た白銀の体に、葉の耳と赤い実の目を持った、所謂『雪うさぎ』なるものが写っていた。
「…………。」
思わず固まってしまう。が、これをあの征くんが作ったのかと想像して、笑ってしまう。きっと僕にも雪を見せたくて、わざわざ作ったのだろう。
その優しさに口許を綻ばせながら、そっと手紙と写真を抱き締めた。
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赤黒のつもりで書き始めたら黒赤っぽく
なってしまいました(笑)
離れ離れになったキセキも、実はこんな事を
思ってればいいなぁと。