夢の中の国

□暇
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「……暇、だなぁ…」


森の住人、ボリス=エレイが呟いた。



気候があまり変わらないこの世界。
森は今日もいい天気だった。
ボリスは森で一番大きな木に登り、街を見下ろす。

「今日はアリス来ないんかなぁー」

いつもならアリス以外にも迷った騎士サンとかが来るのに。
何で今日は誰もいないんだ。

「むー……。猫は暇が嫌いなんだよー」

なんて呟いてみる。
ハートの城に忍び込むのも飽きちゃったし、お茶会に紛れるのも気分じゃない。
クローバーの塔に行ったら、今にも消えそうな夢魔サンがしごかれていると思うし、行ってとばっちりを喰うのは絶対嫌だ。
コレクションの手入れもいつも以上に時間をかけて、既に終わらせちゃったし。

「……退屈」


俺はいつも、何をしていた?

コレクションの手入れ、銃の試し打ち、アリスをからかって、城の兵士サンと遊んで、双子と悪戯して、帽子屋サンとこのお茶会に参加して、野良猫と戯れて、夢魔サンを笑って。


……………


何か、足りない。


イライラして揺れていた尻尾が止まった。


何が足りないんだ。俺がやってることが他にあるのか。
何なんだよ、気にくわない。
思い出せない自分に腹が立つ。それより、不安もつのる。

何で忘れた。どうして。絶対忘れちゃいけないことなのに。
俺は、何で、



「ボリスー」

不意に、声が聞こえた。
少し高めの。
返事をする前に、そいつは木を登って俺の前に現れた。

「えへへ、久しぶりー」

「え、あ、」

「意外に時間かかっちゃってさぁー。ちょっとしつこいし、大変だったかも。まあ、俺にとってはらくしょーらくしょー?」

俺と向かい合うように枝に跨がったピアスは、間延びした語尾で話した。

「そっか……」

「え、何?」

紙袋から大好物を出して、チーズうまーなんて言ってるこいつがいないから。

暇じゃなくて、寂しかったんだ。

何かわかんないけど、泣きそうになって。


「……おかえり」

「うん!」




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