夢の中の国
□sweet
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「いい?手はこうよ、猫の手」
「にゃんこ!?」
「手を丸めなさいってことよ!」
……何で私はピアスにお菓子作りを教えてるんだろう。
事の始まりは3時間帯前。
森で怪しげなキノコやら葉っぱを拾って、ボリスにプレゼントするんだとか言っていたピアスを見掛けた。
何となく見覚えのあったキノコ達は、双子が毒薬やらを精製するときに拾って来ていたものだったから。
あまりにも心配で、食べることは無いだろうけど、それをプレゼントされるボリスの心情を想像したら……つい、声を掛けていた。
「アリスー、切り終わったよ!」
「わかったわ、今見………」
言葉を失った。
だって、包丁の持ち方が凶器と同じ…!
果物やチョコレートは、切るどころか無惨に斬殺されていた。
そんな表現がぴったりだわ……。
まな板まで切れてるなんて……!
「ピアス?もう1度最初からやりましょう。手を猫の手にして…」
「うん」
「包丁は軽く、こうやって握って」
「こう?落としちゃうよ」
「そう。絶対いつもみたいな持ち方は駄目。そうしたら、猫の手を軽く果物の上に乗せて、動かないようにして……」
根気よく、物凄く丁寧に教えていった結果。
6時間帯ほどかけて、食べられるものが完成した。
「凄いじゃないピアス!初めてなのに…」
「本当?凄い!?」
「凄いわ!」
出来上がったのは簡単なケーキ。
フルーツケーキなのかそれともチョコレートケーキなのか、どんなケーキとすら言えないくらい果物やらチョコレートやら飾り付けがされているけれど、ピアスがそれがいいって言ったんだから、それでいい。
箱に入れてリボンを掛けて。
ボリスの元に向かうのね。
何故今日ケーキがいるのか理由はわからないけれど素敵な笑顔で。
「行ってくるね!」
………ケーキ、忘れてるわ。