犬鬼灯

□第4話 過去の時間
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ある午後の晴れた日、烏間さんの指導のもと、ナイフを振る。何故烏間さんなのかと言うと、殺せんせーの体育が頗る不評だったせいだ。あれは酷かった。

こんな訓練に意味があるのか、と疑問を口にした前原に対し、烏間さんは磯貝と二人がかりで自分にナイフを当ててみろと言った。

軍で訓練を積んできた烏間さんにその刃が届くわけもなく、二人まとめて地面に倒される。

「ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々。体育の時間で俺から教えさせてもらう!」

その日の授業はここまでだ。ちなみに殺せんせーがその間、砂の大阪城を建て、茶を点てていた。



「日向さん!」
「うん?どしたの?潮田。」
「いや、日向さん達ならナイフ、当てれるのかなって思って。」
「え、いや無理だよ?」
「え!?あ、そっか。何か2人って何でも出来ちゃうイメージあって…。」
「んー、確かにアタシ達は天才だけどね。」
「それ自分で言うのか。」

潮田と話してると杉野が後ろから会話に入ってきた。

「事実だしね!まあえっとね、わかりやすく言うと才能ってのは最初からレベル100あるわけじゃなくて、レベルが上がるまでの経験値が少なくて、最大レベルが高い…みたいな感じかな。」
「あ、なるほどわかりやすい。」
「ぶっちゃけアタシはさ、ナイフなんてほぼ触ったことないよ。それも誰か…何かを殺すためなんかにさ。」
「そりゃ普通ないよ。」

「ま、こんな話してるより、さっさと教室戻ってテスト勉強したほうがいいよ。」
「あー6時間目小テストかー。」
「体育で終わってほしかったよね。」

有言実行と言うか、さっさと教室に戻ってしまおうと歩を進めると、誰かが立っていることに気付いた。

「カルマ君…帰って来たんだ。」

隣にいる潮田が呟く。
カルマ。赤羽業。



「助けてなんて頼んでないけど、お礼は言っておくよ、ありがとね。」
「あんまりありがたくなさそうだなー。いいけどね、俺は正しいことをしただけだし。」
「正しい?」
「うん、そうでしょ?だってカツアゲしたこいつが悪で、俺が正しいんだ。先生も言ってるしね。」
「……ふーん。先生が言わなかったら、正しくないの?」
「?正しいよ。」
「そう、そうだね、君は正しいよ。」





あれ、何だ今の。走馬灯?いやいやまさか、別に死の危機に瀕してる訳でもあるまいし。きっと懐かしい顔を見たからだ。ああ、それにしても変わってないな。

などと思いを馳せていると、カルマと握手した殺せんせーの腕が溶けた。どうやら掌に対先生用ナイフを細かく切って貼っていたらしい。

「…へー。本トに速いし、本トに効くんだこのナイフ。細かく切って貼っつけてみたんだけど。」

「けどさぁ先生。こんな単純な『手』に引っかかるとか…。しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビり過ぎじゃね?」

「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど。」

「あッれェ、せんせーひょっとしてチョロイひと?」
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