Books L<Gensou-suikoden>
□Lost topia.10
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「クルガン様、シード様。ソロン様がお呼びです。」
「わかった。」
すっかり明るくなった辺りを見回すと、奥には軍馬が整列し、兵士達も一糸乱れない隊列を組んでた。
「時間か。」
シードとクルガンは彼らの前に立ち、上官であるソロン・ジーの登場を待った。
不意に視界に入ったシードの姿に違和感を感じ、クルガンは視線を戻した。
彼がいつも襟につけていた国章が無いのだ。
元々国章の携帯は義務では無いが、軍服でいる時の彼がそれを付けていないことは初めてだ。
「外したのか?」
「は?…ああ、これね。今修理中なんだよ。」
クルガンに言われ襟元に触れる。
いつもそこにある小さな金属の冷たい感触が無いことに、自分でも少し違和感を感じた。
数ヶ月前のとある出来事で手放したのだ。
しかし、まさか国章を手放したなどと正直に話すと厄介なことは間違いない。
説明を求めるクルガンの視線にシードはバツの悪そうな態度でため息を着いた。
「ちょっと前に引っ掛けたんだよ。」
簡潔にして内容の無いその答え方に、詳しく聞くなというニュアンスを滲ませる。
珍しいシードの表情に、面白いと言わんばかりにクルガンが含み笑った。