少年陰陽師
□君と僕
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僕の世界は君一人
君の世界は僕一人
僕はそれを望んだけれど、君の心はどこにあったの?
長の姫として幸せに暮らすこと。
貴族のもとに嫁入りすること。
薄紅色の桜を愛でること。
野原を駆け回って遊ぶこと。
海を、見ること。
その全てを叶えられないこの世界で僕と逃げ続けることが本当に君の願いだったの?
もうその答えは聞けない。聞こうとも思わない。
だって君は、僕の名前を呼んで死んだから。
それは、遠い昔に捨てざるを得なかった僕の宝。
これで僕も、生きていないモノとして消え失せるのではなく一人の人間として死を迎えられる。
そう、君のおかげで。
名は人を表し、導き、束縛する。
ならば、君の言霊に縛られて黄泉に落ちるのも、悪くはないのかもしれない。