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□人類最強になるまで
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この地下街の入口の近くには、水汲み場があり、一般人もたまにこの付近を通る。
まあ、地下街の怪しい奴らが常にうろうろしているので、通る者は多くないが…。
そんな怪しい場所に、1人の若い女が水汲み場へ向かう為に通った。
何故わざわざ危険な道を通るのか分からないが、やむを得なかったのだろう。
しかも、その女は良いところの娘らしく、高級そうな洋服や装飾品を身につけていた。
もちろんその『獲物』を地下街の奴らが見逃すわけもなく。
「おいねーちゃん、いいもん持ってんじゃねえか。ちょっとこっちこいよ」
「え…!?や、やめてください…っ」
そこにちょうど外の空気を吸いに来ていたリヴァイが通りかかった。
「…てめぇら……何してやがる」
リヴァイは、盗みや暴力を平気でする奴だったが、困っている者がいれば声をかける優しさを持っていた。
特に、子供や高齢者、女には。
別に気に入られたいから、などの考えは全く無く、ただ、大丈夫かと声をかけずに見捨てることはできなかった。
これは生まれながらの性格なのだろうか。
しかし、両親の顔を知らないリヴァイには、性格など関係ない事だった。
「!リヴァイ…」
男達は、リヴァイの低い声と殺気に少し怯んだ様子だったが、すぐに悪人面に戻った。
「お前、この女を助けようとしてんのか?はは、とんだ茶番だな!お前だってこの女の物を盗もうと考えてるんだろ!」
そう言ってナイフを女の首につける。
「ひっ……!」
金になりそうな物を盗みたい、という気持ちも無いことはないが、そんなことよりも…
あの女を助けなければ。
でないとあいつは犯され、金品を盗られた後、売られてしまう。
リヴァイは人間が売られる光景を何度も見てきた。
子ども達が、リヴァイ兄ちゃん、助けて、助けてと叫び、殴られ、連れていかれる。
そのときリヴァイは何もできなかった。
それ故、人身売買だけは許せなかった。
「…その女を離せ」
そう言って、手持ちのナイフに手をかけ飛び掛ろうとした。
そしたら。
「おっと下手な真似はするな。そこから1歩でも動いたらこいつの命はねえぞ」