青エク

□祓魔塾始動
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入寮を済ませた翌日、学園の入学式が行われ、朝祇たちもそれぞれのクラスに向かった。
若干の成績順でもあるクラス分けを考えると、朝祇は学力だけなら勝呂と同じ特進、もしくは子猫丸と同じA組なのだが、例によって廉造の交渉で廉造と同じC組だ。

洋風の歴史を感じさせる建物の中は、空間が広くとられ解放感がある。窓はひとつひとつ装飾格子になっており、ステンドグラスを使うところすらある。
教室も、広さや天井は普通より一回り大きく、前方にはキリスト教学校らしいマリア像と十字架が飾られている。
制服に関しては私立ながら規則が緩く、新入生たちはすでに着崩している。それでも多くはちゃんとブレザーもワイシャツもボタンを一番上まで止め、ネクタイやリボンを定位置につけている。

廉造はその中でもかなり崩していて、ネクタイはせずワイシャツを3つほど開けて中のシャツを見せており、ブレザーも全開だ。スラックスからワイシャツも出している。頭髪もあって、不良っぽさが出ているが、軟派な雰囲気が厳つさを防いでいた。
かくいう朝祇も制服はちゃんと着ない主義で、ブレザーの固さが嫌いですでに脱いでいた。春先の寒暖差に対応するために指定の物ではない白っぽいクリーム色のカーディガンを羽織っている。ワイシャツとネクタイは第1ボタンを開けて緩めてはいるものの、ちゃんと着ている。とはいってもシャツ出しはしているので、決して真面目な格好ではないが。


やがて、だんだん教室に生徒が増えてくる。2人は窓際後方に縦に並んで座っていた。自由に座って良かったため、このベストポジションを獲得できたのだ。時間に厳しい勝呂と行動したおかげである。
ちなみに隣同士にしなかったのは、学園の机が大きく距離があることと、ずっと中学時代にこれが定位置だったからだ。

窓からは春のおだやかな日差しと少し冷たい風が吹く。その爽やかな感じが心地好い。


「にしても、ホンマ何もかも豪華やねぇ、この学校は」

「学食にシャンデリアとステンドグラスはないよな」


だだっ広い教室を見渡して廉造がしみじみと言う。確かに、入学式からここまで引率されて見学したが、どこもかしこも広い間取りに豪華な装飾が施され、王族にでもなったようだった。
しかもすべて洋風であるため、京都の和風な町並みが恋しい。


「ねえ見てあの2人、めっちゃかっこよくない?」

「ほんとだー!仲いいみたい、同じ中学だったのかな!」

「チャラそうな感じとクールな感じでちょうどいい組合せだよね!」

「このクラスでラッキー!」


すると、教室の反対側で女子4人グループがキャッキャッと騒ぎ始めた。中身が丸聞こえである。聞こえたらしい周りの女子もちらりとこちらを見て色めき、男子も「終わった…」と諦めの声を小さく上げていた。


「あはは、丸聞こえやねんなー、かわええー」

「完全に浮くだろ、これ」

「まぁええやん?どうせ祓魔塾のがメインなんやし」


男子に疎まれそうだったが、廉造は気にしていない。朝祇も言うだけで、まったく問題視していなかった。
廉造は騒ぐ女子たちに軽く手を振る。余計にキャーとうるさくなった集団に、ため息が自然と漏れた。


「おもろいなぁ。もし俺らが付き合うとるって分かったらどないすんのやろ」

「キスでもしとく?」

「そこまで学園生活捨てる気ないで」

「奇遇だな、俺もだ」

「でも見せつけたいんは事実やけどね。この子は俺のやで〜!って言いとうなる」

「じゃあやっぱキスするか?」

「ホンマしとうなるからやめたって」


2人揃って女の子は嫌いではないからこそこのような会話になるが、それで成立するのは2人が心から互いを信頼しているからだ。だから、こんな浮わついた話ができる。勝呂たちは理解できないようだけど、これもまた、2人の愛の形である。


「おっ、あの子かわええな」

「俺は隣のゆるふわ系のが好み」
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