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□死穢八斎會戦/前編
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焦凍との一件を無事に解決した翌日、特に体の調子も悪くなく、いつも通りに朝を迎えた。食堂で朝食を揃って食べていれば、2人のことを察したらしい上鳴や切島、緑谷がホッとしたように見ていた。

その後教室へ入ると、スマホのニュースを見ていた賑やかし組が騒いでいた。
どうやら切島と蛙吹、麗日が活躍したらしい。


「どうしたの?」

「お、見ろよ灯水、切島のヒーロー名がニュース出てんの!ほら!」


上鳴に差し出されたスマホを見ると、確かに列怒頼雄斗とある。
切島は関西の江洲羽市にあるファットガムの事務所でインターンをしているとのことで、さっそく市内での事件を解決したそうだ。ならず者が暴れていたそうで、一時は拳銃まで出てくる騒ぎだったようだが、切島は1人で市民を庇って戦闘した。


「こっちは麗日たちの!」


続いて、芦戸が見せて来たスマホには麗日と蛙吹の名前があった。
2人はリューキュウの事務所で活動しており、巨大化した男どうしの喧嘩を収めた。巨大化していたことで市街地への被害が甚大なものになりかねなかったが、2人と波動の活躍もあって瞬時に解決された。
ちなみに切島は天喰と同じ事務所でもあるので、灯水や緑谷と同じくビッグ3の紹介ということになる。


「3人ともすごいね」

「灯水君も、デク君と同じとこでやってるんだよね」


素直に感心していると、麗日が照れながらも聞いてきた。それに頷き苦笑する。


「まだ大したことしてないけどね」

「でもトゥウィッターで灯水のこと書いてるツイート見たぜ」


3人のような派手なことはしておらず、別にそれをどう思うわけでもないのだが、その活躍をすごいと思っていると、上鳴がそんなことを言った。


「え、なぜ」

「名古屋で灯水がインターンしてるってのと、ナイトアイのとこにいるってのがツイートされてた。体育祭3位だもんな、切島たちみてぇに活躍してなくても、いるだけで話題になるんだろ」

「そんな芸能人じゃあるまいし…」


大げさだ。そう思っていたが、突如として緑谷が「そんなことないよ!」と割り込んできた。


「ヒーローは人気商売的側面もやっぱり否定できないもん!灯水君はエンデヴァーのこともそうだし、体育祭での活躍やビジュアルもあるから世間の注目度は高いんだ。雄英体育祭であれだけ活躍したからね。特にオールマイトが引退して、次の世代が強く意識されてるから、現No.1ヒーローであるエンデヴァーの息子がどんなヒーローになるのか、皆気になってるんだ」

「へ、へぇ〜…」


早口で捲し立てられて、内容よりそちらに意識が向く。ただ、切島たちもその意見に同意しているようだったので、灯水は自分では理解しにくいものの、エンデヴァーの影響と思えば活躍と注目が必ずしも比例するとは限らないのだと理解できる。


「何事もないのが一番だろ。ヒーローが活躍する機会はない方が望ましい以上、芸能人みてぇな人気も必要なんじゃねぇか」


隣にいた焦凍も頷いて言った。そう言う焦凍が将来的に一番芸能人のような人気を掻っ攫いそうだ。本人にそうした自覚がまったくないためこういうことが言えるのだ。
それを理解している灯水含め周囲は、そんな天然王子に苦笑を漏らして、上鳴はちょっとキレる。


「じゃあ俺はショート推し筆頭になるね」

「お、それなら俺はヒスイ筆頭だな。ファンクラブ早めに作んねぇと」

「焦凍…」

「灯水……」

「あ〜いちゃつくのは他所でお願いしまァす」


互いにそんなことを言えば、上鳴が呆れて2人の間に腕をばっさりと振り下ろした。灯水はふざけただけだが焦凍は真面目だったので、そんな上鳴を睨みつけていた。上鳴が不憫でならない。
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