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□USJの試練/後編
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火災ゾーンから水蒸気爆発によって飛んできた2人は、水難ゾーンの近くの地面に落ちた。灯水の水蒸気と尾白の尻尾によって無事に着地したものの、非常に高温の場所で動いたことや爆風で移動するなどという無茶をしたために、疲労で動けなかった。
結果、灯水は抱えられていた尾白の上体にもたれかかるようにして息を整える。汗ばんだ尾白の鎖骨あたりに頭を置いて思い切り体重をかけていると、「そろそろ重い…」と尾白が漏らした。


「…てか尾白君、俺のこと姫抱きにしたっしょ」

「え、今それ言う…?てか暑い…」

「文句ばっか!」

「いや、灯水のせい…あれ、涼しい」


灯水は体温を調節しつつ、冷気を纏った。焦凍も同じことができるが、灯水は全身でそれができる。エアコンいらずの子供部屋だった。
武闘派だけあって屈強な体をしているが、あの戦いの後では疲れていたらしい、きつそうにしていたので仕方なくどいてやった。


「…まだ煙上がってる」

「ほんとだ、いやぁ、こんなに爆発するとはねぇ」


あはは、と笑うと、尾白は「笑いごとじゃないだろ…」と呆れたようにしていた。
火災ゾーンからはいまだに白い煙が上がっている。急に冷やされた建物や道路が水蒸気を放ち続けているのだろう。


「2人とも!大丈夫!?」


そこへ、聞きなれた声がした。見てみると、やはり宙に浮いたグローブ。


「葉隠さん!無事だったんだ!」


尾白が安心したように息をつく。葉隠は地面に座ったままの尾白の肩を叩く。


「うん、轟兄弟が一緒だったから一瞬!皆の無事を確認してるとこなの!尾白君も良かった!それにしても、さっきの爆発は灯水君?」

「そう、ちょっと思ったより爆発した」

「うっかりが過ぎるよー!でも、無事でよかった。火災ゾーンに飛ばされたのは尾白君だけ?」

「そうみたいだね…」


灯水たちが一緒に飛ばされたということで、ひとりで戦闘させられた尾白は乾いた笑いを漏らす。不憫だ。


「そういえば、水難ゾーンは?」

「うん、緑谷君、梅雨ちゃん、峰田君がいたんだけど、見事に突破してたよ!今池のほとりで広場の方見てる」

「そうなんだ。蛙吹さんが一緒でよかった」


水難ゾーンのような難しい地形だと、蛙吹の力が役に立ったことだろう。緑谷も頭がいいから、機転を利かせて乗り切ったに違いない。峰田の個性も汎用性が高い強いものだから、この組み合わせは非常に良かったのではないだろうか。


「これからどうしようか、山岳ゾーンには上鳴君がいるみたいだけど…」

「うーん、でもまずは先生の指示を仰ぐべきじゃないかなぁ?入口のところに残った人たちや、自力で脱出した人がいるかもしれない」


地形的にそこまでの不利にならない山岳、暴風・大雨ゾーンはまだ確認できていない。そちらに行くべきかもしれないが、葉隠の言うことも正論だ。あくまで灯水たちは生徒、ここではプロの言うことを聞けるなら聞くべきだ。


「でもあそこが安全かもわからない。もしかしたら一刻の猶予もない人たちもいるかも」


だが尾白は施設内を見渡して思案した。あちこちで戦闘中の音がしており、倒壊ゾーンでは爆発音もする。爆豪はあそこにいるかもしれない。
今は非常事態、臨機応変な対応を優先するべきか。いかんせん、まだヒーロー科3日目の灯水たちには、何が正解なのか分からなかった。


「とりあえず、緑谷君たちに合流してみよう、数がいた方がいいし」


とりあえず、まだ池にいるという緑谷たちのところへ行って、皆で考えることを提案した。尾白たちは頷き、水難ゾーンへ3人で連れ立って向かった。
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