hrak

□置いて行かれたのは
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「イレイザー!?イレイザーじゃないか!テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!」


声をかけてきたのは、女性のヒーローで相澤と知り合いのようだった。しかし相澤はとても嫌そうな顔で振り返る。
直後、女性はとてもにこやかに言った。


「結婚しようぜ」

「しない」

「しないのかよウケる!!」

「相変わらず絡みづらいなジョーク」


爆弾発言にざわつくA組をよそに、女性、ヒーロー・ジョークは噴き出す。一瞬芦戸あたりは恋バナの予感に目を輝かせたが、すぐにそれが冗談だと分かって落ち込む。
ジョークは近くの人間を強制的に爆笑させて思考力を鈍らせることで敵を倒すスタイルを取り、緑谷いわく狂気に満ちた現場になる。

そんなジョークは相澤と事務所が近かったために知り合ったようで、救け救けられを繰り返すうちに相思相愛の仲にならなかったのだという。


「なんだ、お前のとこもか」

「そうそう。おいで皆!雄英だよ!」


ジョークは後方に呼びかけた。すると、ぞろぞろとジョークの受け持つ生徒たちがやってくる。
黒髪の爽やかイケメンを先頭にやってくるのは、傑物学園高校の2年生だ。

爽やかイケメンはさっそく、A組のところにやってきて緑谷と握手した。


「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね!」

「えっ、あ、」

「しかし君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだね!素晴らしいよ!!」


真堂というイケメンは、緑谷をはじめ上鳴や耳郎など手あたり次第に握手していく。


「不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!」


その笑顔はあまりに眩しく、イナサとは違った意味でクラスにいないタイプに生徒たちも押され気味だ。綺麗に決まったウィンクが輝かしい。
すると真堂は爆豪、そして灯水の方を向いた。


「中でも神野事件を中心で経験した爆豪君、轟灯水君、君らは特別に強い心を持っている」


真堂に手を包み込むように握られ、曖昧に笑って返す。あのときは全然心は強くなどなく、むしろ完全にメンタルはやられていた。
事件の後から、やっと灯水は「普通」になれたのだ。


「今日は君たちの胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」


続いて真堂は爆豪に握手を求めたが、爆豪はその手をはたき落とした。


「ふかしてんじゃんねぇ。セリフと面が合ってねぇんだよ」


一瞬、真堂の目に影が差したが、切島が代わりに謝るともとの爽やかの表情に戻る。あれは裏がある。
この試験、上級生たちの中で決して一筋縄ではいかないことを察するには十分な出会いの連続だった。



***



コスチュームに着替え、受験者たちは競技場のメインスタジアムに向かった。廊下から部屋に入ると、そこは1000人あまりの受験者たちで埋め尽くされている。ただの四角い部屋の前はひな壇があり、その真ん中にやつれた男がいた。その後ろには巨大なスクリーンがある。
集合が終わると、男がマイク越しに喋り始めた。



『えー、ではあれ、仮免のやつをやります。あー、僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠、よろしく…仕事が忙しくてろくに寝れない…!人手が足りない…!眠たい!そんな信条のもとご説明させていただきます』


隈のひどい目良という男は、これでも免許を管轄する公安の人間らしい。可哀想になってくるほどのやつれぶりだ。
そうして弱弱しい口ぶりと、独特な毒のある語り口調で説明されたのは、やたら厳しい内容だった。

ヒーロー飽和社会となり、事件解決速度はとても早くなった。そこで、今年はスピードを重視し、先着100名を一次審査合格とする勝ち抜きの演習を行うという。だいたい、6.5%ほどの合格率といったところか。

条件は、1人につき3か所につけられたターゲットにボールをくっつけること。正確には、3つ目のターゲットにボールをくっつけた時点で1人を倒したと認定される。それを2人分倒せば勝ち抜きとなる。
そして与えられるボールは合計6個。確実に2人を拘束してボールをすべて使い切るか、誰かが2つ分ボールをつけた人を横取りして最後の1つを狙うか、という戦法になる。

ターゲットは平たい灰皿のようなもので、見える場所であれば体のどこにつけてもいい。


『えー、じゃ展開後ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートとします』


その言葉とともに、部屋の隅が突然開いていく。
なんと、この部屋は巨大な直方体で、まさに展開して壁や天井がなくなった。
ここはスタジアムの中で、この部屋の周りには工業地帯、繁華街、高層オフィスビル街、高速道路、岩山、水辺などの地形が用意されていたのだ。

いよいよ試験の開始である。
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