hrak

□1年A組
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壁で囲まれた市街地型のグラウンドβ。その更衣室で着替え終わると、廊下から市街地に向かう。

周りが楽し気に話している傍らで、焦凍は体の左側を凍らせた。
焦凍のコスチュームは上下の白のシャツとスラックス。左目にだけゴーグルのような覆いをつけて、それ以外の半身を完全に氷に閉ざした。リュックのように背負っているのはラジエーターで、恐らく熱量の調整に使うのだろう。
母の力だけでトップヒーローになり、炎司を否定するという目標を掲げる焦凍には当然のコスチュームなのかもしれない。


「顔痛くない?」

「熱で調整するからな」


体温調節くらいなら左の個性も使うようだが、戦闘ではまず使わないだろう。

一方、灯水のコスチュームも焦凍に似て質素だった。グレーのシャツに迷彩のスボン、黒いロングブーツ、黒いフィンガーレスの手袋。シャツの長袖は捲っている。
腰の茶色のベルトには、横に小さな手榴弾のようなものを引っ掛けている。中には圧縮した蒸気が入っており、煙幕代わりに使うつもりだ。二の腕には袖がはためくのを防ぐために細いベルトをつけている。
首には黒い首輪のようなチョーカーをつけており、これは体温が乱高下したり危険な温度になりそうなときに振動して知らせてくれるものだ。ブーツと手袋は蒸気を出すのを支える役割と同時に、噴射による凍結から肌を守る機能もある。グレーと迷彩の色合いは、蒸気や氷の中に隠れやすくするためだ。

見た目こそ地味だが、意外と高機能で考えられて作ってもらった。単に要望でこういう機能が欲しいと書いただけでここまでしてくれるとは思わなかった。

グラウンドβの出入り口に集まると、全員が揃ったのを確認してオールマイトが声を張り上げる。


「始めようか有精卵ども!!戦闘訓練のお時間だ!!!」


オールマイトの説明では、これから行われるのは対人屋内戦闘訓練とのことだった。

敵による凶悪犯罪は、市街地での屋外戦闘が注目されがちだが、実際に件数データで見てみると屋内犯罪が圧倒的に多い。そういった現状と、これまでの無機物相手の訓練では分からなかった基本的な部分を学び取るために、対人かつ屋内での戦闘訓練という形式がとられたらしい。


「コンビおよび戦闘相手はくじだ!」

「適当なのですか!!??」


くじ引きの箱を持つオールマイトに飯田が突っ込む。飯田は騎士の甲冑のような白いコスチュームだ。


「プロヒーローは他事務所と急造チームアップすることが多いし、そういうことじゃないかな」

「そうか…!先を見据えた計らい、失礼いたしました!!」

「いいよ!早くやろ!!」


オールマイトの際立った画風では分かりづらいが、本当にそういうことなんだろうか、とは思わないでもない。ただ緑谷の説明もその通りだと思うので、くじ引きは合理的といえる。


結果、灯水はIチームになった。数の関係で一か所が3人になるが、灯水はその3人チームのようだった。他のメンバーは尾白、葉隠だ。


「よろしくね、灯水君!」

「よろしく、葉隠さん。尾白君もよろしく」

「うん、よろしくね、ええと、」


尾白は金に近い茶髪に尻尾が生えた男子で、道着のようなコスチュームだ。武道派なのだろう。


「灯水でいいよ」

「分かった、よろしくね、灯水君」

「私頑張っちゃうぞ〜!」


葉隠はグローブと靴以外に見えていない。つまり、それ以外は全裸だ。透明人間だから分からないでもないのだが、尾白に目配せすると苦笑を返された。これは、変に気を遣う。
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