「やあ、来たね」
近付いてきた足音に反応して振り返った赤司。
教室の窓から差す陽はもうオレンジに染まっていて、遅い時間を表している。
「静かだけど大丈夫かな? 安心してくれ、別にとって食おうなんて考えてないからね……少ししか」
嘘だよ、と悪戯な顔で赤司は笑って見せた。
それと一緒に揺れる赤い髪は一段と染まり、存在感を増している。
同じような瞳を一度窓の外に向けると、再び戻してこちらに足を進めた。
「君が側にいるだけでこう……気持ちが落ち着いたり、騒いだりするんだ。どうしてかな?」
夕日の所為でか赤司の顔は赤く染まっている。
こんな顔をする赤司は珍しいと思う。涼しそうな顔をして凛と立っているほうが印象深い。
珍しい様子のままの赤司にふと手をとられ、握られる。
「出来ればこれからも側にいてくれると嬉しいな」
ふと優しい笑みが浮かべられた。
「いつもありがとう」
15.5.29