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□心弾む雨の日
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心弾む雨の日



「うわ…ヒデェ雨だな」

凛が居間の障子を少しだけ開けると、滝のような雨が降っているのが見える。屋根に雨が打ち付ける音からも、相当の激しさだとわかった。

「この雨じゃどこにも出かけられねえじゃねえか…」
「そうだな」

あからさまにがっかりする凛。俺は特に反応するわけでもなく、座布団に座って茶をすすった。のんびりした様子に凛が怪訝な顔をする。

「…お前、何でそんな落ち着いてるんだ」
「?」

質問の意味がわからなくて首を傾げると、凛はもう一度質問した。

「前に雨の日はプールに入れないから嫌いだって言ってたろ」
「ああ…そのことか」

確かに、最近まで雨の日は嫌いだった。
鮫柄の屋内プールと違って、岩鳶の室外プールは天候に大きく左右される。
雨でプールに入れずに落ち込む俺を、何度も真琴に慰めてもらった。
そんな思い出のせいで、いつしか俺は雨の日が憂鬱になったくらいだ。

「今はもう嫌いじゃない」
「何だそりゃ。一体どういう風の吹き回しだ?」
「…それは秘密」

人差し指で口元に当てて、クスリと笑う。

「んだよ、勿体ぶらずに言え!」
「凛には教えない」
「嬉しそうなツラして言いやがって…」
「嬉しいからな」

雨の日は凛とずっと家に居られる。
外では一本の傘に二人で入ったり、肩を寄せて雨宿りもできる。それがとても嬉しくて、雨の日が憂鬱じゃなくなった。
俺がそう思えるようになったのは、凛が隣にいてくれるからなんだ。

「…にしても、いつ止むんだ?この雨」

更に激しさを増す雨空を見上げる凛。
まるでこの家から出ることを拒んでいるかのようだ。

「当分止まないな」
「え?」

どこか確信めいた口調に凛が振り向く。

(まだまだ凛と二人きりで過ごしたいのに、そう簡単に止むわけないだろ?)

口には出さずに教えてあげた。

* * *

愛里様リクエスト
『雨の日に七瀬家でほのぼのと過ごす遙凛』
シチュ提供ありがとうございました!

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