ドリーム1

□懐かしい光
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「結姫さん!!」


彼女の声を最後に、結姫は意識を飛ばした


フワフワとする意識の中、結姫は自分がどうなったのかを考える
怨霊との戦闘中、暴走した怨霊が別の怨霊を呼び寄せ、混戦と化した戦いの中で、一番多くの怨霊を相手していた結姫は油断した所を・・・


「あぁ、そっか。死んだんだ」


以前ならそれぐらいで死にはしなかっただろうが、ゆきが白龍の力を使うごとに結姫の命は削られており、その結末だろう
きっとこれからは、ゆきの命が削られることになる。可哀そうな事をしたと思うけど、どうしようもない
それに結姫はもう・・・


「もう、姉さん達にも会えないんだ・・」


既に死んでいるのだから、走馬灯・・・とは違うのかもしれないが、今までの記憶がよみがえってくる
とりわけ、初めて京へ飛ばされてからの事が主だ
ツー、と流れるはずのない涙が流れる


「・・・?」


しかしそれは不思議な事に、頭上へと上っていく。髪が逆さになっていないこともあり、普通の場所ではないという事も理解していてもその現象が不思議だった

何の感覚もない空間。まるで涙が吸い込まれていく場所に、微かに光が見えた気がした・・


−−−−−−−−−−−−


北大路深月には、前世の記憶がある
そういうと若干語弊がある。生まれた瞬間に、喋れはしなかったものの「なんで?」と思い、成人した今でもその時の事を覚えている

前世では色々あったものの死んだ時には17歳。ひどく大人びた、そして暗くは無いが少し冷めた性格の子供は、周囲の人間にはどう思われていたのだろう。少なくとも母親には、気味悪がられていたことだろう

そんな深月には、二人の兄がいる
父親の後を継いだ上の兄、皐月
母親と同じく俳優の道に進んだ下の兄、悠月
2人は普通ではない深月を、それでも受け入れてくれた数少ない人間だ
その2人がいなかったらきっと、笑えもしなかったし就学後に孤立していただろう

前世の影響で文武両道の深月は、兄達と同じようにスイスにも留学していた
日本に戻ってからは北大路の家を出て、都内の高級マンションに住み、皐月の秘書見習いとして働きつつ、手の空いた時には学生時代に描いていた小説を原作とした漫画を描いて過ごしていた

主人公は中学生、途中で高校生に成長する女の子
姉や友人、時には1人で別に世界に飛ばされ、神の力を使える少女と、その少女を守る男性達に力を貸し、時に対立しつつその世界の危機を回避する、ファンタジー時々恋愛要素も入る話

まぁつまり、自分の前世である
忘れたくない一心で思い出を書き留めているのを、兄達の友人の同じく小説家をしている人に見られ、それだけの内容なら本にしてみればいいと言われたのは、留学中の一時帰国中だったか・・

売れ行きはかなりのもので、画力もあることから漫画(自分で言うのもなんだがそっくり)も連載していることから、何度か再発行を繰り返している

アニメ化やドラマ化の話も上がり、ドラマ化は頑として断り続け、アニメは放送開始してしばらく経つ、そんな頃・・・
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