NOVEL

□神谷とのはなし
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神谷の奴ここんとこ荒れまくって大変なんすよー
と、大塚が言っていたが、ここまで負のオーラを出す神谷は久しく見ていない。全国優勝を果たして、ユース選考合宿目前にして、何やってんだかと思わなくもないが、どうやら久保の話を中心とした映画を作るという企画があるらしく、あいつはそれが気にいらないらしい。
「なんでだよ。いい話にしてくれるらしいじゃん。」
それは、希代の天才が、志を同じくする仲間と共に一からチームを作り、夢半ばで倒れ、親友が苦しみながら後を引き継ぐという、青春ドラマで、加納や内海や、俺なんか特に悪役っぽく扱われるらしい。

「だから、やなんだよ。」

よく、わからないんだが。

「あんたが本当は優しいって、誰もわかんないじゃないか!」

神谷がまるで自分のことのように怒ってくれるので、最早悪役で良かったと思う自分は単純すぎやしないかとも思うが。
「俺は本当は優しい奴なんかじゃないからいいんだよ。」
「嘘つけよ…。」
「嘘じゃねえよ。…お前だから、だろ?」
神谷が、今までの怒った顔から一変してきょとんとした顔をするので思わず吹き出してしまう。
本当は優しくなんて、ない。
これ以上嫌われたくなくて必死だった。
いつのまに自分のなかにこんな気持ちが産まれていたんだろう。
お前はいつからそんな風に誤解していたんだろう。

「お前、それはさ…。」
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