妖精と…

□妖精とデスペナルティ
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 フィリアが店を出てしばらくすると、空の色が変わった。色が染み込む様に徐々に変わるのではなく、画像が切り替わる時の様に一瞬の出来事だった。

(昼の時間帯から夕方の時間帯へ…か。)

 時間の流れとしては現実と同じなのだが、先程の変わり方は現実ではあり得ない。日が落ちるのを早回しにしたと言うものでもなかった。

(これが、ユリウスの言っていた時間帯と言う概念…。)

 フィリアは茜色に染まった林道を地図を手に警戒しながらも進む。

(ユリウスがモンスターは出ないと教えてくれたけど、領土争いをしているくらいだもの、警戒しすぎると言うことは無いわよね…。)

 心地よい風がフィリアの髪を揺らす。しかし、その風に不穏な臭いが混じっていた。

(もうすぐ遊園地のはずなのに、この臭いは…血??)

 目を凝らすとフィリアの進む先に体格の似通った2人の人影が見える。2人は1振りづつ身長よりも大きな斧を持ってこちらへ歩いて来ている様だ。フィリアはどんなことにも対処できるよう持っていた地図をストレージ欄に入れ、精神を張りつめた。

(戦士系のプレイヤーかしら? とにかくいい人そうだったら情報収集、向こうが戦闘を仕掛けてくるならそれなりに相手をしよう。)

 フィリアは2人が近づくにつれ、子供であること、それぞれが赤と青の服と帽子を着用していることを確認した。2人もフィリアに気がついたのだろう。フィリアに駆け寄り、楽しそうに話し出した。

「お姉さん、どこから来たの?」
「この先の屋敷に用事?」

(うっ…アバターだと分かっていてもグロい…。)

 フィリアは2人に笑顔で話しかけられたが、思わず後退りしてしまった。なぜなら、2人の顔や服には他人の血と思われるものがべったりと付着していたからだ。

「もしかしてお姉さん、悪い人?」
「悪い人ならやっつけなきゃね! 僕ら勤勉な門番だもん。」
「そうだね、兄弟!」

 2人はそういって血に濡れた斧をフィリアに向けた。フィリアは自分に向けられた敵意を感じた瞬間、後ろに跳び腰の愛剣を抜いた。

『双子の門番:Tweedle=Dee』
『双子の門番:Tweedle=Dum』

 どうやら青い服のほうがディー、赤い服のほうがダムという名前の様だ。

(今度は読み間違えて無いといいけど…。門番か…。とりあえず相手の力量も判らないし向こうは2人組。羽も未だに使えないし今使える最善の手は…。)

 フィリアは状況を整理しつつ手にした愛剣を握り直す。

(とにかく、やってみるか…。)

 フィリアの表情が変わったのに気がついた双子は残虐な笑みを浮かべる。

「ふーん、お姉さん僕らに抵抗する気?」
「これは面白くなりそうだね兄弟!」
「そうだね、簡単に死んじゃわないといいね兄弟!」

 双子は物騒な台詞を言い、フィリアに先制攻撃を仕掛けた。
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